和歌山県串本町の沖で見つかった2種類のエビが相次いで新種と確認され、今年、WEB雑誌で世界に紹介された。新種が論文などに掲載されるさいは、学名とともに発見者の名前が記される。2種類とも発見した平林勲さんは「自分の名前が学名とともに残るのは感慨深い。うれしいです」。

広島県呉市出身。愛媛大学理学部へ昆虫の生態を学ぼうと進んだ。たまたま受けた授業で、サンゴと共生するスズメダイの生態を知った。「えさの藻をサンゴで育てる、農業をする魚です。とても刺激的でした」。研究の対象を海の生物に変え、サンゴと、サンゴを守るように生活するサンゴガニを専門に研究を進めた。

6年前に串本海中公園センターに入った。センターの眼前は、本州最南端のサンゴの群落が広がる絶好のフィールドだ。サンゴの産卵時期にあたる6〜8月は、産卵の様子を記録しようと、毎日のように潜水し、泳ぎ回った。「同じ場所を何度も潜る。よくいる生物は知ってしまう」。海底が自分の「庭」のようになったかのようだ。


そんな研究生活をしていた2018年5月、水深14メートルの海底の石の裏に、前脚がカマのように大きい見慣れないエビを見つけた。体長わずか1センチほどだが、見逃さなかった。新種の「キイカギテシャコエビ」と分かった。同じ年の7月夜には、サンゴの産卵を調査中、水深約10メートルの海底で、体に比較して大きな目がライトに光ったのに気づいた。

「うん?、変わったのがいるぞ」と採集。夜行性の新種「トゲツノミナミロウソクエビ」だった。「長く、いろいろな生物を見続けないと、気づかないようです」。

研究対象の「本命」はエビではなく、サンゴガニ。「新種を見つけたいですね」。努力を重ねれば、その日は近いかもしれない。(直井政夫)
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