非正規労働者が増えた日本とフランスの違い

エコノミストの深尾京司氏らは、日本では非正規労働者の増加が労働分配率低下の実質的な要因になっていることを確かめた。また、韓国でも同様の結果が出ている。しかし、ヨーロッパには、非正規労働者が多いにもかかわらず、賃金への影響が大きく異なる国がある。
日本と最も対照的なのはフランスだ。非正規労働者が労働力の3分の1を占めているにもかかわらず、1995年から2011年の間、フランスの賃金と生産性の伸びの差はわずかであった。
何が違うのだろうか。
両国とも、同一労働同一賃金が法律で定められている。フランスでは、労働検査官の活用を含めて法律を執行している。一方、日本では、問題の調査と違反者の起訴を義務付けられた省庁がない。被害者は自分で訴訟を起こし、費用を負担しなければならない。
さらに、フランスでは正規・非正規を問わず、組合に所属しているかどうかにかかわらず、ほぼすべての労働者が組合契約の対象となっている。日本では、組合員のみが契約の対象となり、派遣労働者や派遣会社から派遣された労働者が組合に加入することは法律で認められていない。
確かに、フランスの非正規労働者の平均賃金は、一般労働者の平均賃金よりも20%低い。しかし、多くの非正規労働者が、正規労働者にも低賃金を支払う職業や企業で働いているという事実を考慮に入れると、賃金格差はなくなる。

また、フランスは積極的労働市場政策にGDPの2.2%を費やしており、これはOECD25カ国の中で5番目に高い。フランスの非正規労働者は日本同様、労働時間の短縮や特定の手当を受けられない、正社員になるのが難しいといった多くの困難に直面している。しかし、フランスでは、明らかな賃金差別は問題の1つではない。
もっとも、労働不足の深刻化は労働者の交渉力を向上させるため、今後賃金をめぐるポジティブな動きが政治周りであるかもしれない。

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