邦人退避迅速化へ自衛隊法改正、国が検討 アフガン初動遅れ受け

岸信夫防衛相は14日の記者会見で、海外有事の際の邦人退避迅速化に向け、自衛隊法を改正する検討に入ったと明らかにした。8月のアフガニスタンへの自衛隊機派遣時に初動が遅かったと批判されたことを踏まえた措置で、現地の安全確保を条件に「在外邦人等の輸送」を定める同法84条の4の改正を模索する。2022年1月開会の通常国会への提出を視野に作業を本格化する。

 岸氏は「84条の4について更に改善できないか検討するよう首相から指示があった」と説明。「例えば現地の安全確認の方法について、制度として改善の余地がないかなどの検討を行っている」と述べた。「海外で邦人が危機にさらされたとき、個人の保護、退避に全力で当たることは国の当然の責務だ」とも語った。

 84条の4は「輸送を安全に実施することができると認めるとき」に自衛隊機を派遣できると定める。アフガン派遣では、8月15日に首都カブールが陥落してから国家安全保障会議(NSC)で派遣を決定するまで8日を要した。加えて退避開始直前に近隣で爆発が発生し、アフガン人日本大使館職員ら500人以上は当初、自衛隊機で移送できない事態となった。

 岸氏は当時について「自衛隊法が障害になった事実はない」と語ったが、84条の4は外国人輸送に厳格な要件を定め、手続きに時間がかかったことも決定の遅延の要因とされる。要件緩和も焦点となる。

 岸田文雄首相は13日の衆院予算委員会で「自衛隊が現地に赴く際の『安全』は、決して民間における『安全』と同じ意味ではない。よく整理する必要がある」と述べていた。防衛省幹部は「羽田空港並みに安全でなければいけないといった誤解がある。その部分を直すということだろう」と語った。【畠山嵩】

https://mainichi.jp/articles/20211214/k00/00m/010/228000c.amp