2021年12月1日、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)が提供するハイレゾストリーミングサービス、「mora qualitas」が2022年3月にサービスを終了することが発表された。
2019年10月に開始した同サービスは、およそ2年半という短命で終わることになる。

 ハイレゾストリーミングというくくりで見れば、2019年9月にAmazonが「Amazon Music HD」をスタートさせ、mora qualitasはその翌月にスタートしている。タイミングとしては悪くなかったはずだ。
料金もスタート当初はAmazon Music HDが1980円(プライム会員は1780円)、mora qualitasが2178円と、それほど大きな違いはなかった。

 潮目が変わったのは、5月のApple Musicハイレゾ参入だ。追加料金なし、すなわち従来の非ハイレゾサービスと区別なくハイレゾも聴ける。
月額980円のままでハイレゾも聴けることになった。

 これは要するに、ハイレゾだから料金が少し高い、という高音質ビジネスを根本から破壊する。
ハイレゾは「より多くのサービス利用者を獲得するための付加価値」という位置付けになった。
翌月にはAmazonも料金体系を変更し、同額で追従した。

 これによって、mora qualitasは競合サービスに比べて倍以上高いことになった。
多くの利用者がAppleとAmazonに流れたと想像はつくが、Apple参入から半年で白旗を上げることになったのは、勝負が価格攻勢では打つ手がないということだろう。

 ただ、ソニーのサービスが短命に終わるのはこれに始まったことではない。
2012年に開始した音楽ストリーミングサービスの「Music Unlimited」も、およそ3年で終了しており、損切りが早い。

 現在はSpotifyの協力を得てPlayStation上で「PlayStation Music」に事業承継した形にはなっているが、終了時の2015年時点ではSpotifyが日本で事業をしていなかったので、国内ユーザーは単にそこで終了が告げられただけだった。
筆者はMusic Unlimitedを契約していたので、よく覚えている。

 そういう意味では、音楽ストリーミングサービスは事業承継されるケースが多く、ばっさり打ち切りというケースは実は少ない。
会員制サービスゆえにいったん始めるとそう簡単にはやめられない事業でもある。

https://www.itmedia.co.jp/news/spv/2112/15/news123.html