菅氏、待望論じわり 衆院選前「選挙の顔にならず」?今、派閥結成臆測も

 菅義偉前首相が首相を退任して2カ月が経過したが、自民党内で早くも、表舞台への復帰待望論が出始めている。
衆院選前に「選挙の顔にならない」として、政権を追われた菅氏だが、
最近では新型コロナウイルスワクチン接種を推進した「功労者」だと称賛されることもある。
「菅派」の結成を期待する中堅・若手もおり、その動向に注目が集まっている。

 菅氏は15日、BS11の番組に出演し「首相というのはやはり批判の対象になる。
ただ長年にわたっての課題について判断して、少なくとも道筋はつけてきた」と、実績を強調しつつ首相在任の1年間を振り返った。

 菅氏は最近、メディア出演や会合への出席など発言の機会を増やしている。
11月30日には、自衛隊が運営した東京都にあるワクチンの大規模接種センターの任務完了式に出席。
12月4、5日には、自身がライフワークとする沖縄県の米軍基地負担軽減の目的で同県を訪れ、
普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の進捗(しんちょく)状況を確認した。

 菅政権は2020年9月に発足したが、新型コロナの第5波など感染拡大が続き、対応が後手になったことで批判を受けて、内閣支持率が急落。
衆院議員の任期満了が近づく中で、菅氏は求心力を失い、21年10月に退陣した。

 しかしその後、新型コロナの新規感染者数は急速に減少し、10月の衆院選は緊急事態宣言が解除された状態で行われた。
党内から「選挙の顔にならない」とたびたび指摘された菅氏だったが、選挙戦では多くの候補から応援演説を要請された。
遊説先で大勢の聴衆に囲まれ、「ワクチンありがとう」と声がかかる場面もあった。

 退任直後は冷ややかな視線を送られることもあった菅氏を取り巻く環境は変わった。
岸田文雄首相も11月11日、首相官邸で菅氏にワクチン接種推進への謝意を伝えた。

 党内では「菅派」を結成するのではとの臆測も出ている。
安倍晋三元首相は首相在任時に当時官房長官だった菅氏に派閥結成を勧めたこともあり、
12月3日のインターネット番組で「菅さんが派閥を作ろうと思えば簡単にできる」と述べた。

 岸田政権は岸田、麻生、茂木3派と、最大派閥・安倍派が支えている。
菅派が誕生すれば、主流派から外れた二階派や森山派と連携する構想もささやかれる。
菅氏を支援する若手が集う「ガネーシャの会」(15人)の一人は「最低でも政治資金パーティーを開いて資金集めもして、
党内で一目置かれるグループにならなければならない」と話す。

 菅氏自身は態度を明らかにしていない。15日のBS11の番組で「派閥を作るのか」と問われた菅氏は「へへっ」と笑みをこぼした後、
「いろいろ言われるが、政策を実現するには賛同してくれる人が必要だ。
政策を掲げて、そこに集まって物事を進めていく方が大事だ」と答えるにとどめた。【田中裕之】

https://mainichi.jp/articles/20211218/ddm/005/010/097000c