旧ソ連出身の仏映画監督が北方領土・国後島の現状を描いたドキュメンタリー「クナシリ」がこのほど日本で公開され、北海道内でも上映中だ。日本に届くことが少ない北方領土のロシア人住民の生の声を伝える貴重な記録となっている。

【写真】国後島の海岸でさびた戦車の砲塔わきに立つコズロフ氏=2018年5月、同氏提供

 監督したのは、旧ソ連・ベラルーシ出身のウラジーミル・コズロフ氏(65)。第2次大戦中の独ソによる激戦でベラルーシの民衆を見舞った惨禍を、迫真的な描写で描いたソ連映画「炎628」(1985年)などで助監督を務め、92年フランスに移住した。

 日本での新作公開にあたり、コズロフ氏が朝日新聞の書面取材に応じた。制作のきっかけは「もともと『世界の果て』に関心があった。知人から、国後島にはソ連軍によって破壊された日本の村があり、その跡に壊れた墓のほか、陶器などあらゆる工芸品が見つかることを知らされた」ことだという。

 「島で消滅した日本文化と千島列島の問題に興味を持ち」、2013年に国後島を予備調査に訪れた。さらに制作資金を準備し18年5〜6月に再訪。「中心地ユジノクリリスク(日本名・古釜布)の市街を出るつど、ロシア国境警備隊の通交許可証を調べられながら、4週間にわたり撮影をした」という。

 今回の映画では、国後島を占領した旧ソ連軍に旧日本軍が白旗を掲げて降伏する式の再現など、北方領土でロシア側が強化する愛国心高揚の試みがたびたび出てくる。「島のロシア領有は第2次大戦の結果だ。日本に返す理由はない」と語る地元企業人も現れる。

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