新型コロナ禍の第3波襲来から始まった2021年。春には第4波、夏には第5波と立て続けになった。
医療崩壊で多数のコロナ死者を出した大阪の惨状を忘れてはいけない。

5月初旬、大阪の確保病床の使用率は100%を超え、一般病床と両立可能な病床の使用率は160%近くまで上昇した。
「札幌医大フロンティア研ゲノム医科学」のデータによると当時、大阪の人口100万人当たりのコロナ死者数は累計196.39人(5月10日)。インド国内の181.15人(同)を軽く超えていた。

患者受け入れの窓口となる保健所や医療現場からは連日、過酷な感染症対応に悲鳴が上がっていたという。大阪府関係職員労働組合(府職労)の小松康則委員長がこう振り返る。

「保健師の労働時間は過労死ラインを超え、『深夜1時、2時まで働いている』『いつ自分が寝ているのか分からない』といった声もありました。
現場がいくら患者を入院させたくても、府の『入院フォローアップセンター』に『無理です』と断られ、入院させられない申し訳なさを抱えていた人もいます。
看護師は感染リスクに怯え、人手が足らないせいで寝たきりのコロナ患者を十分にケアできなかったといいます。
過酷な環境ゆえに辞める人が続出し、ますます人手が足りなくなるという、悪循環に陥っていた」

今は感染状況が落ち着いているとはいえ、いつ第6波がやって来るとも分からない。感染再拡大に対応しなければならないプレッシャーを、保健師は常に抱えているという。
「保健師は普段、DV被害や引きこもり、自殺未遂の支援をしています。それと並行して、コロナ対策も行っている。過酷な労働環境のせいで、
『また感染の波が来たら……』と、トラウマすら覚える人もいるのです」(小松委員長)

大阪の“インド超え”の惨状を招いた吉村知事に、現場の声は届いているのか。


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