介護職員賃上げ 国の負担
来年10月から4分の1に激減
補正予算1000億円(8カ月)→来年度予算案150億円(5カ月)

岸田政権は介護職員の賃金を来年2月から3%程度引き上げるため全額国費の補助金を9月まで交付しますが、
10月以降は補助金をやめ、介護報酬で対応することを来年度予算案に盛り込みました。
国負担は4分の1に激減する代わりに、介護保険利用料や40歳以上が払う介護保険料に負担が転嫁されます。

岸田政権は今月成立した今年度補正予算の措置で、約1000億円の「介護職員処遇改善支援補助金」を都道府県に交付します。
現行の処遇改善加算の対象で、来年2・3月から賃上げをおこなった事業所に、1人当たり月額平均9000円の賃上げに相当する額を支払います。
補助額の3分の2以上は基本給か毎月決まって支払われる手当の引き上げに使うことが要件。介護職員が対象で、ケアマネジャーなどは対象になりません。

ところが岸田政権は、来年10月以降の賃上げについては介護報酬の臨時改定で対応すると決定。
来年度予算案に、同10月から再来年2月まで5カ月の介護報酬引き上げに伴う国負担分、150億円を計上しています。

政府資料によると、介護職員の月額平均9000円の賃上げに必要な費用の総額は月125億円程度です。
補正予算では8カ月分の約1000億円が全部国庫負担で措置されていますが、介護報酬に付け替えると国負担は25%しかないため、国の予算が大幅に減っているのです。

賃上げの原資を、利用者負担や保険料に跳ね返る介護報酬に付け替えることに、関係者から危惧の声があがっています。
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(24日、持ち回り開催)では、「介護報酬に繰り入れられることは、利用者としてはこれ以上の負担増は困難な現状がある」(認知症の人と家族の会)、
「サービス利用者、被保険者に新たな負担が発生する。負担が過重とならないよう必要な措置を検討、実施してほしい」(全国市長会)などの意見が相次ぎました。

岸田首相は「新しい資本主義の実現」を掲げ、「分配戦略」の目玉として公的価格の在り方の抜本的見直しを掲げました。
ところが介護職員の賃金は、全産業平均と比べ月額8万円も低いのに賃上げ額は月平均9000円にとどまり、介護労働者から「一桁違う」と強い反発が上がりました。
そのうえ全額国費の補助金はたった8カ月だけで、あとは介護報酬に入れ込みます。低年金の高齢者が払う保険料や、要介護状態のなか1〜3割の利用料負担にあえぐ高齢者に負担を押し付けるものです。

憲法でうたわれた社会保障を充実させる国の責務を投げ捨て、国民に「応益負担」を求める新自由主義路線を走る岸田政権の姿勢が浮き彫りになっています。

(内藤真己子)


https://www.jcp.or.jp/akahata/aik21/2021-12-30/2021123001_02_0.html