予想を超えたApple、未来の道筋が見えたIntel、Windows 11に進んだMicrosoft 2021年のパソコン動向を振り返る

2021年は前年に続き、「パソコン」を大きく進化させるトピックが続いた。その中心的な役割を果たしたApple、Intel、Microsoftの動向を中心に振り返る。

2021年、テック製品の業界で予想外だったのはAppleだった。自社設計チップの「M1」をどのように拡張するかについて、まさかあれほど大規模なSoC(System on a Chip)に仕立て上げるとは思わなかったのだ。「やればできる」と「実際にやる」は全く別のこと。「M1 Pro」「M1 Max」を作ることにしたAppleの判断には驚かされた。

 しかし、個人的にこの業界から今年一番の注目ニュースをピックアップするならば、半導体の巨人であるIntelが意欲的なロードマップを発表したことだ。

 2月にIntelに復帰してCEOに就任したパット・ゲルシンガー氏の戦略、10月に発表した第12世代Coreプロセッサとそのコンセプトなどからは、数年にわたってPCプラットフォームが新たな進化を遂げる道筋が垣間見える。

Intelの競合といえば、好調なAMDの存在もある。ただし、チップの製造能力という面でみると、台湾TSMCで主力製品を生産するAMDがPC業界の需要を全て満たすことはできない。IntelもTSMCのメジャーカスタマーではあるが、自社でも最先端の製造能力を持つわけで、業界へのインパクトの大きさという意味で今年のIntelは興味深かった。2022年はさらに面白い年になるだろう。

まさかの超大型だったApple M1の拡張版

 筆者は今年の初めにAppleがM1後継チップをどのようなものにするかと考えたとき、拡張に際して、より効率的にチップを生産しつつ、パフォーマンスにスケーラビリティを持たせる計画だろうと予想していた。

 つまり、10月に発表されたM1 ProとM1 Maxが、もともと超大規模だったM1をディスクリートGPU並の演算パフォーマンスに引き上げてくるとは考えなかったのだ。ましてやApple ProResコーデックを扱うための動画専用プロセッサ(メディアエンジン)を統合したり、ディスクリートGPU並みにコアを並列化(最大32コア)するため、2つの新しいSoCを設計したりするなんてことは、思い付いたとしてもなかなか実行できない。

 iPhoneとMacでは出荷台数が桁違いな上、Macの主流はあくまでもM1を搭載する製品だ。M1 ProやM1 Maxをカスタムで設計しても、商売としてはペイしない。半導体メーカーなら当然そう考える。しかしAppleは半導体メーカーではなく、コンピュータハードウェアのメーカーだ。

 チップで利益を出しているのではなく、それを搭載したMacなどの商品を販売して利益を上げている。M1 ProやM1 Maxを他のメーカーに販売しているわけではないのだから、何個生産してどのぐらい利益を上げるといったことは考えないと気付くべきだった。

MicrosoftのWindows 11による刷新は成功しつつあるか

 チップ以外の動向では、Microsoftが2015年のWindows 10以来、初のメジャーバージョンアップとなる「Windows 11」をリリースしたことも取り上げたい。

 Windows 10からOSとしての基本アーキテクチャはほとんど変わっていないものの、プラットフォームとして最新の環境にフィットするように作り直されたWindows 11へのトランジションはうまく行えたように思う。

MicrosoftはB2B領域での事業も絶好調だ。コンシューマー製品ばかりをみていると、Appleばかりが目立つ昨今だが、Microsoftの業績、その躍進ぶりはApple以上といえるかもしれない。

 Windows 8で始まったユーザーインタフェース設計の迷走が、Windows 10で何とか1つの形として落ち着き、そしてWindows 11で完全に整理されたと思う。

https://www.itmedia.co.jp/pcuser/spv/2112/31/news028.html