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認知症徘徊の事故に備え保険加入、GPS貸与支援 伊賀市

認知症の高齢者らが徘徊(はいかい)中に事故などを起こし、損害賠償を求められる事態に備え、伊賀市は今月、市民が月額六百三十八円で賠償保険に加入でき、衛星利用測位システム(GPS)端末の貸与も受けられる支援事業を始めた。損害賠償請求に対し、最大三億円の補償を受けられる。市によると、県内初の取り組み。
 市は、保険とGPS端末の貸与を組み合わせたサービスを提供する「ホームネット」(東京都)と提携。月額二千七百五十円の利用料のうち、利用者負担分を除く額と、一台一万一千円の端末導入費を負担する。
 対象は、市内で在宅生活するおおむね六十五歳以上で、行方不明になる恐れのある高齢者の親族。親族の住所は問わず、市の窓口を通じ同社と契約する。本年度に三十人、来年度以降は六十人の利用者を見込む。市はこれまでも月額六百三十八円でGPS端末を貸与していたが、利用は例年十件程度だった。
 端末はかばんに入れたり専用の靴(別途税抜き七千八百円)の底にはめ込んだりする。行方不明になった場合は、二十四時間三百六十五日対応のコールセンターで探索依頼を受け付け、スマートフォンやパソコンでも現在地を確認できる。端末のブザーを遠隔で鳴らせる機能も付いている。
 二〇〇七年には愛知県で認知症の高齢者が電車にはねられて死亡し、JR東海が家族に高額の損害賠償を求める訴訟を起こした。こうした事態に備え、認知症の住民を対象に公費で民間の賠償保険に加入する自治体は全国にある。
 伊賀市内では昨年、六十代以上の少なくとも十四人が行方不明になった。市介護高齢福祉課の担当者は「ご家族に少しでも異変を感じたら早めに相談してほしい」と話す。