「子供部屋おじさん」は母親の歪んだ“息子愛”が元凶だった!?

子どもが実家からなかなか独立しない(できない)大きな理由の1つとして、親子同居のメリットの大きさが挙げられます。例えば、子どもが社会人になってからも両親と共に3人で暮らしている場合、一人暮らしをしたら100万円かかっていたコストが58万円程度で済むのです。
一人暮らしに比べ、親との同居は圧倒的にコスパがいいのです。

しかしその一方で、「結婚しても家のことが何もできなさそう」というイメージが先行するようで、「実家住まい」の男女は婚活市場では人気がありません。

また、2016年に実施された興味深いアンケート調査結果があります。
母親と父親が、その息子・娘に対して<いつ頃までに結婚してほしいか>を尋ねたところ、父親から息子・娘への結婚希望時期は「20代後半まで」が1位、母親から娘への結婚希望時期も「20代後半まで」が1位であるのに対し、母親から息子への結婚希望時期だけは「30代前半まで」が約4割を占め、1位となっています。

しかし男性が30代前半になるとすでに同年代でも未婚女性は3割程度しか残っていません。

また20代女性と年の差婚をと考えても、初婚を目指す男性についての年の差婚の発生確率はかなり厳しいです。
31歳、32歳の男性の成婚ともなると、20代までの妻の割合は52%、45%です。
その後も1歳年齢が上昇するとともに20代までの妻の割合はどんどん下落します。36歳では29%と3割を切り、38歳では22%、5人に1人まで下落します。
40代では1.5%、50代では0.08%という、ともにまずは発生しないといえる確率に下落します。

「子ども部屋おじさん」が急増する背景には「わが子かわいさ」のあまり、いつまでも息子との同居を許してしまう母親と、そんな妻(子ども)のありように無関心な夫、という日本の夫婦の姿が見え隠れします。
この日本で、先進国のなかでは異例の割合で子どもを「子ども部屋」に囲い続け、親離れさせないのはいったい誰なのか、考える必要があるでしょう。


東洋経済オンラインより
天野 馨南子 : ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー