佐々木)ウイグル弾圧について、以前だとチベットの弾圧については言われていましたが、ウイグルに関してはそれほど問題になっていませんでした。実は、最初のきっかけになったのは、2001年の同時多発テロ、9・11だったという話があるのです。あのときアフガンにアメリカ軍が攻め入り、そこでアフガンとパキスタンの国境で活動していたウイグル反体制派の人たちを、何の根拠もなく逮捕・勾留しているのです。キューバにある「グアンタナモ収容所」に連れて行き、当時、習近平体制ではなかったためアメリカと中国は蜜月期で、ウイグル人反体制派を中国人に尋問させているのです。

飯田)そうだったのですか!

佐々木)グアンタナモに、アメリカ人ではない外国人が入って来て、収容者を尋問するということは、多分他にない。その辺りから話がこじれて来るのだけれど、まず同時多発テロが起きたことで、「イスラム側がアメリカに異を唱えるためには、テロを起こすことがいいのだ」ということが、1つのテロリストのテーゼとして生まれた。ウイグル人たちは、「なるほど、そうやって我々も中国に対抗すればいいのだ」と考えるようになり、9・11後にウイグル人によるテロがいくつか起きるのです。

飯田)9・11後に。

佐々木)それに対して、中国は「これはまずい」と。「いままでは、ウイグルに対して何もしていなかったけれど、これは徹底的に弾圧しなければいけない」と発想が切り替わるようになる。

佐々木)もう1つは、グアンタナモでウイグル人を拘留していて、しかもアメリカ人は拷問をしている。アメリカ人兵士が首を絞めたりしているところを、中国人が写真を撮っていて、その写真が残っているらしいのです。例のウイグル弾圧について書かれている「新疆文書」のなかに。

飯田)「新疆文書」に。

佐々木)それを見た中国政府は、「そうか、別に逮捕状や根拠がなくても、収容所に無理矢理連れて行って、強引にやっても大丈夫だ」、「法の逸脱はOKなのだ。アメリカもやっているぐらいだから」と思うようになったという話です。

飯田)特に、対テロ戦という大義名分があれば。

佐々木)それまでは、「何の根拠もなく拘留するのはよくない」というぐらいの節度は中国政府にもあったのですが、それがグアンタナモで切れた。解き放たれたということです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/709b7e85485ba85aa36739b9f12326f9ff5252d8