時の首相が内閣の公的な行事を私物化する。1年近くにわたり、国会で「虚偽」答弁を繰り返す。訴追されなかったとはいえ、安倍元首相の政治責任は重く、今に至るも説明責任を果たしていないことは不誠実極まる。このままの幕引きは許されない。安倍氏は改めて国会の場で、残る疑問に答えるべきだ。

安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)をめぐり、検察審査会の「不起訴不当」の議決を受けて再捜査していた東京地検特捜部が昨年末、安倍氏を再び不起訴処分とした。補填が選挙区内での違法な寄付にあたるとする公職選挙法違反など二つの容疑が対象だったが、これでこの件での安倍氏への捜査は終結した。

検審の議決は、関係者の供述だけでなく「メール等の客観的資料も入手」して判断すべきだったなど、十分な捜査が尽くされたとは言い難いという厳しい指摘だった。検察は改めて不起訴とした理由について、「十分な証拠が得られなかった」と説明したが、再捜査の具体的な内容に触れることはなかった。どこまで徹底した調べが行われたのか、釈然としない。

安倍氏は1回目の不起訴の際は記者会見を開いたが、今回は「厳正な捜査の結果、不起訴と決定されたものと受け止めている」と、短いコメントを出しただけだった。進んで事の顛末(てんまつ)を明らかにし、国民の納得を得たいという姿勢はうかがえない。

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