>>292
 ―『攻殻機動隊』も観てらっしゃらないんですか?
宮崎駿「観てないです」
 ―押井守さんから、宮崎さんについては、いろいろ面白いコメントをいただいてるんですけど、宮崎さんからはどうなんですか?
宮崎「いや、なにを犬に狂ってるんだ、バカってね(笑)」
 ―(笑)よく知ってますね。
宮崎「知ってますよ。人の犬に悪口言ってきてね、それで、喧嘩したんですから(笑)。汁かけ飯がなぜ悪いってね。僕は汁かけ飯で犬飼ってたんですよ。それで17年も生きましたからね。だけど、押井守は、なんか犬のために伊豆に引っ越ししたでしょう。家の周りに犬の通路作ったりしてね、そのバカ犬をさ、雑菌に対する抵抗力がないから外に出さないとかね。それを聞いたとき、なにやってんだこいつ、って思ったんですよ。大体、ブリーダーってみんな胡散臭い顔してるでしょ(笑)。押井さんに言ったんですけどね、『そんなに犬が好きなら、愛犬物語作れ』って。くだらないもの作ってないでね。人間の脳みそが、電脳がどうのこうのなんて、そんなんじゃなくてね」
 ―観てるじゃないですか(笑)。
宮崎「いや、観てないんですけど。わかるんですよ。士郎正宗の『攻殻機動隊』は読みましたもん。これ全部入らないから、どうせ適当に全部意味ありげに語るんだろうって。意味ありげに語らせたら、あんなに上手い男いないですからね(笑)。『機動警察パトレイバー2 the Movie』のときなんか、まいりましたもん。なんか意味ありげだなあと思っていたら、『しょせん意味などないんだ』ってね(笑)。おかしいなあと思うと、先回りして言うんですよね。実に語り口は巧妙なんですけど、要するに押井さんが言ってるのは、東京はもういいやってことなんだろう、だから、伊豆に行って犬飼うんだろうって。自分が短足だからって、短足の犬飼うなってね。そのバカ犬がさ、家の中にウンコとかおしっことかしてると聞くと嬉しくてね」
 ―しかし、押井守の宮崎駿評と、宮崎駿の押井守評ほど面白いものはないですね。
宮崎「いや、基本的に友人ですからね。だから、元気に仕事やっててほしいんですけどね。でも、押井さんはね、本当はものすごく生活を大事にする人で、彼が作ってるような形而上学的なとこで生きる人間じゃないと思うんですよ。もう無理矢理70年で止めちゃってね、ぐずぐず言っているけど、本当はものすごく健全で、潔癖な男なんですよね」
 ―鋭いですね。
宮崎「そんなこともうちゃんとわかってますよ。朝早く起きて、夜は寝るもんだってね。そのくせジブリはスターリン主義だとか、いろんなこと言うんですね(笑)」