「洗いなさい」幼稚園児が母親を軽蔑した日のこと

幼稚園児の頃、突発的に同じマンションに住む友達の家へ遊びにいくことになった日があった。
何を話したのか覚えていないけれど随分盛り上がったし、
その友達が別れ際にダブっていた「忍者戦隊カクレンジャーソーセージ」の
おまけの高さ3cmほどの小さな塩ビ人形をくれたので終始ハッピーだった。

家に帰って母親にその顛末を話すと、人形を誰からもらったのかを再確認してきた。

「あのアトピーの子?」
確かにそうだった。「うん」と返した。
「洗いなさい」と彼女は言った。

あまりのおぞましさにぞっとした。
友達に対してそんなありえないことを吐き捨てる母親が許せなかった。
それに、幼稚園児の自分でもうつる類の症状ではないことはなんとなく理解していたし、
仮にうつるとしてもそんな言い方がまかり通るはずはない。

当時こんなふうに言語化できていたわけではないけれど、
「まずいことになったぞ」という気づきは確かにあった。うちの親はやばい。
覚えているうちではこれが一番古い記憶で、”こういうこと”は彼女と暮らした18年間で何度となくあった。

彼女はこういう未就学児でも失笑混じりにでたらめだと断じられる偏見や迷信や超科学をいつも何度でも口にした。
短慮で差別的で無知蒙昧な言葉をやすやすと口にした。
恥ずかしくて申し訳なくて惨めでたまらなかった。
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