みなさん、こんにちは、李琴峰です。
タイトルの通り、SNSを一時的に休止します。
これまで何度かやってきた「少し距離を取る」ではなく、「一時的に休止」するのです。アカウントそのものが見えなくなります。
原因は色々ありますが、最大の原因ははっきりしています。
SNSに、あまりにも時間を使い過ぎているからです。
ツイッターでもフェイスブックでも、これらのSNSを利用している時、私は常にネットフリックスのドキュメンタリー「監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影」や、ドラマ「ブラックミラー」のあるエピソードを思い出します。
「監視資本主義: デジタル社会がもたらす光と影」は、SNSがもたらす中毒性と社会の両極化、議論の先鋭化といった問題点について問題提起しています。
「ブラックミラー」の当該エピソードでは、フェイスブックを模したSNSの運営会社の社長が定期的な「デジタルデトックス」を行っているところが描かれており、その社長は、「(SNSは)最初はただ数人の友達と新しいツールを作るつもりでいたが、次第に規模が大きくなり、自分ですらコントロールできない巨大な獣になっていった」(大意)と述懐しています。
SNSの問題点と弊害について、私はよく理解しているつもりでした。よく理解している上で、上手い付き合い方を考えようとしたつもりでした。
それでも、気がつけばタイムラインをパトロールし、エゴサをしてしまう自分がいます。そんな自分の行動にハッとし、うんざりしてしまうこともしばしばです。
ひと言で言うと、疲れたのです。
フォロワー数をいちいち気にすることに疲れました。ネット空間に飛び交う不毛な口論と喧嘩、先鋭化した議論の応酬を目にすることに疲れました。エゴサするたびに自分に対する好意的な意見や批判的な意見にいちいち喜んだり落ち込んだりすることに疲れました(ちなみに大抵の人間は10個の好意的な意見があっても、否定的な意見が1個あるだけで落ち込むものです)。インターネットの匿名性をいいことに、自らの言論に対して何ら責任も負わず、差別的な発言をただただ撒き散らす人たちに疲れました。
確かにSNSには利点もあります。宣伝や告知のツールとして便利だし、業界や社会の新しい情報をいち早く手に入れることができます。素敵な出会いだってたくさんあるし、読者やファンからのありがたいお言葉もたくさん受け取ってきました。
だから、今後一切使わない、とは言いません。ただ疲れたから、暫く休みたいだけです。どれくらい休むかは分かりませんが、暫くはSNSがない世界を生きてみたい、そんな生活を過ごしてみたいと思います。
SNSに時間をかけるより、もっと有意義なことはたくさんあるはずです。じっくり推敲を経て、丁寧に編み上げられた出版物を読むこと(積読の山が私を待っている)。一本の映画をじっくり味わうこと(見たい映画はたくさんある)。仕事に専念すること(せっかく芥川賞を取ったのだから、そろそろ腰を据えて次の小説を考えなければならない)。旅行に出ること(旅エッセイが書きたい)。日の出と日の入りを眺めること。友人と飲み会や食事会をすること。
そのどれもが、タイムライン・パトロールやエゴサよりも意味が見出せるはずです。
本日以降、李琴峰のフェイスブックとインスタグラムのアカウントを閉鎖します。ツイッターアカウントについては暫く鍵をかけ、一定期間が過ぎてから閉鎖します。noteはこのままにします。
SNSから暫く姿を消しますが、心配しないでください。私は元気です(たぶん)。心配しているなら、LINEやメール、電話などで連絡してください。親しい人や、仲のいい人と電話で雑談するのは好きです。食事会や飲み会、ボードゲーム会などに誘ってください。喜んで行きます。
仕事のご依頼などは、今まで通りメール経由でご連絡ください。
これからも李琴峰の仕事が世に出る予定がたくさんあります。エッセイも翻訳もあるし、小説も出ます。雑誌や新聞、ネットメディアの取材にも出るし、対談やイベントもあります。
ただ、自分でSNSで告知することができなくなるので、読者の皆さんにお願い致します。もし李琴峰の仕事に関する情報を見かけたら、ぜひ拡散していただけると嬉しいです。
そして、李琴峰に会いたくなったら、どうぞ私の小説を読んでください。
私は私の書き言葉の中で生きています。
それでは、暫しの別れです。
またお目にかかれる日を楽しみにしています。
https://note.com/li_kotomi/n/n87aeaa7c41ef