異例の2022年、最もお薦めの投資は?
コロナの猛威とインフレ継続 利上げが待ち受ける中、安定したリターンを上げるには


筆者ジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト

***

 今年最もお薦めの投資は何かと尋ねれば、ビットコインやテスラ株、バリュー株といった答えが返ってくるだろう。

 筆者は、2022年の最もお薦めの投資は「自制」ではないかと考えている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の行方は不透明で、インフレ率は急伸が続くと予想され、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げする構えであることから、どんなことでも起こり得るし、恐らく何かが起こるだろう。

 さらに、最も確実と思われることも、見かけほど明白ではない。そのため、投資家は思い切った行動を取り、後になって後悔するようなことがないよう注意する必要がある。

 なぜ自制が投資家にとって重要な美徳なのかは、FRBの金利決定の歴史を見れば分かる。FRBは今年、早ければ3月から、25ベーシスポイント(bp)の利上げを少なくとも3回行うことを想定している。ほとんどの投資家は、この予想を既定の事柄として扱っている。

 しかし、そうではない。1990年代にさかのぼってみると、FRBは時折、市場の意表を突くだけでなく、FRB自身の予想に反する形で利上げや利下げを行っている。FRBが取りそうな行動に基づいてポートフォリオを見直した投資家は、FRBが全く別の行動を取った場合、身動きが取れなくなる可能性がある。

 また、株価は後退するに違いないように思えるが、これも確実ではない。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)によると、S&P500種指数の昨年のリターンは、再投資された配当金を含めて28.7%と過去半世紀で7番目の高さだった。2020年のトータルリターンは18.4%、19年は31.5%だ。過去3年で、米株は2倍に膨らんでいる。

 したがって、ウォール街のストラテジストがほぼ一様に2022年のリターンが低調になると予想しているのも不思議ではない。今年は実際、金利上昇への懸念から株価が週間で1%安となり、既にさえないスタートとなっている。

 4年連続で大幅に上昇することは有り得ないと考えているとしたら、間違っている。1995年のS&P500のリターンは37.5%だった。1996年は23.1%上昇した。1997年は33.3%、1998年は28.7%、1999年は21.1%それぞれ上がった。

 2000年に、ついに市場が暴落。その後の2年半でS&P500は約50%、テクノロジー株の比重が大きいナスダック100指数は80%以上もそれぞれ下落した。

 しかし、このリターンがマイナスに転じた時期は、筆者を含む多くの市場評論家が予想していたよりもはるかに遅かった。2013年に死去した資産運用家のマーティン・ツヴァイク氏(筆者と血縁関係はない)は、よく次のように言っていたものだ。「市場は常にできる限り多くの人を痛い目にあわせようと、必要なことは何でもする」

 自制が投資の最大の美徳なのは、こうした理由からだ。短期的に確実と思われる予想に基づいて、長期的な戦略を大きく転換すれば、不意打ちを食らい、後悔にさいなまれることになりかねない。

 投資家は常に良いアイデアを求めているが、必要なのは良い習慣だ。長期的に安定した投資を行うためには、同じ手順に繰り返し従うことで習慣化することが必要だ。

https://jp.wsj.com/articles/the-best-investment-for-this-coming-crazy-year-11641787696