「殿も知っているから」の言葉信じ リコール署名偽造、前社長の後悔

https://mainichi.jp/articles/20220112/k00/00m/040/073000c
「ポスティングが一役買ったとなれば業界を盛り上げられるかもしれない」。そんな思いで関わった愛知県知事に対するリコール(解職請求)運動だったが、気付けば犯罪に加担し、後に引けなくなっていた。名古屋地裁で12日、有罪判決を受けた広告関連会社前社長、山口彬被告(39)は判決前、毎日新聞の取材に応じ、「今思えば、偽造を止められるタイミングは何度もあった。多くの人に迷惑をかけて本当に申し訳ないことをした」と後悔を口にした。

「仕事が欲しければプッシュするよ」

 きっかけは2020年6月、たまたま目にしたツイッターの投稿だった。愛知県の大村秀章知事へのリコール運動を成功させるためにポスティングの活用を呼びかける声が上がっていた。自身の会社が主力としていたポスティング事業は当時、新型コロナウイルスの感染拡大により、売り上げが激減。スタッフの生活を守るため、仕事がない中、給与を払っている状況で「タダでもいいから仕事が欲しかった」。
 世間が注目するリコールに協力することでポスティングに関心を持ってもらえると考え、同月下旬、署名活動団体「愛知100万人リコールの会」に連絡。署名集めのためのはがきの無償配布を申し出て、9月下旬までの3カ月間で約350万枚を愛知県内に配った。

それから間もなく、リコールの会事務局長の田中孝博被告(60)と初めて会った。河村たかし名古屋市長の秘書と共に会社を訪ねて来た田中被告は「元愛知県議」と書かれた名刺を笑顔で差し出した。リコール活動について熱弁。口癖のように「高須(克弥・リコールの会会長)さんとはツウツウだから」「社長、名古屋の仕事が欲しければ河村さんにプッシュするよ」と言い、断っても何度も繰り返したという。