食べ歩きの域を超えてラーメンにハマってしまったというマニアなお客さんたち。彼らの中には有名店を訪ねるだけでなく、自称「ラーメン評論家」や「ラーメンブロガー」として独自の評価を個人メディアなどで披露している人たちも多い。その“取材活動”を、一般的なお客さんが間近で目撃してしまい、戸惑ってしまうということもあるようだ。

 会社員の松岡公平さん(仮名)は、近所のラーメン屋に食べに行ったところ、マニアと思わしきお客さんと遭遇してしまった。

「少し混んでいたので順番待ちをしていたら、僕の前に並んでいた30代後半くらいの男性が妙にソワソワしていて様子がおかしいんです。列を離れたと思ったら、券売機の近くにいって、いろんな角度からスマホで写真を撮りはじめたり……。とはいえ腰が低く、誰に対しても会釈をしながらずっとニヤニヤしていました」

 席が空くタイミングが同じになり、松岡さんとその男は同時に案内され、カウンターで隣同士の席になったという。

「その男性は、座って食券を出した瞬間からスマホのストップウォッチ機能で時間を測りはじめて、ラーメンが出来たら『6分で着丼』とひとりごとを言いながらメモ。それからスマホカメラでラーメンを真上から、斜めからと何枚も撮影しはじめました。ノーマルのカメラアプリを使ってるようで、シャッター音が気になるんですよ。

 ようやく箸を取ったので、食べはじめるのかと思ったら『あ、麺上げ忘れてた』とつぶやいて、右手に持った箸で麺をゆっくり持ちあげたところを左手のスマホで連写していて……」

店員さんも、なかなか食べ始めないその男性に何か言いたそうにしていたが、声をかけるまでには至らなかったという。

「ようやく食べ始めたんですが、一口の量が多く、やけにズルッズルッと音を立てながら啜るんです。単にそういう食べ方の人なのかもしれないですけど、『ラーメンは音を立てて啜れ』みたいな主張を感じました。

 そして、別に誰も聞いてないのに『なるほど……』とか『多加水か』などと、ブツブツ言いながら食べ続けて、ものの数分で完食。最後は丼に口をつけてスープを飲み干し、なぜか空中で丼を裏返して、大声で『ごちそうさまでした!』と満足顔。

 店を出ていくときも『大将、美味しかったです! 本日もありがとうございました!』と挨拶していました。ラーメンマニアという人種は知っていましたが、その男性はいろいろ完璧で、ある意味感動してしまいましたね」

そんなラーメンマニアのなかでも、さらにハードでストイックなのが、「ジロリアン」と呼ばれる一派だ。「ラーメン二郎」、またはその様式を真似た「二郎インスパイア系」のラーメンをこよなく愛し、通い続けている。

「大阪にある、二郎インスパイア系のなかでは正統派として有名な某店に行った時のことなんですけど……」と切り出してくれたのは、自営業の馬場悟和さん(仮名)だ。

「その店は券売機方式なんですけど、大盛りのボタンだけ押せなくなってるんです。これは大盛りの量があまりに多いので、初見の人に買わせないようにするための配慮なんですよ。実際に普通盛りでもかなりの量があるから、大盛りはフードファイターレベルの胃袋じゃないと無理だと思います。

 その日、僕はいつものように店内でラーメンを食べていたんですが、券売機の前で30代くらいの小太りの男が店員と揉めてるんです。よくよく聞いていると『初めて来たけど、大盛りを食べさせろ』と主張している様子。

 店員は『うちは1回普通盛りを食べてもらったお客さんにしか大盛りは提供してないんです』と説明してるんですけど、男は『自分は東京から来た。慶應卒でガキの頃から三田本店(※本店は慶應大学のほぼ目の前に位置している)に通っている生粋のジロリアンだ。こんな店でなめた態度を取られる覚えはない』的なニュアンスのことを喚いていました」

以下略
https://news.yahoo.co.jp/articles/67d4e29644b1cabf6397078e54d015618f596ec3?page=2