男性はベトナムで工場に勤めていたが、給料が安く、妻と5歳の娘を残して日本に来た。現地の送り出し機関に手数料100万円を支払うため多額の借金をしており、会社を辞めればそれを返せず、家族への仕送りもできない。外部に訴えたら仕返しが怖い。「我慢するしかなかった」と言う。

 21年6月、意を決して監理団体の通訳をしているベトナム人に連絡。フェイスブックに残っているやりとりの記録によると、監理団体の担当者が会社に話をし、会社が日本人従業員に注意すると言った、という。

 ただ、その後も暴行は止まらなかった。

 男性は同10月、フェイスブックで知り合ったベトナム人を通じて実習生を支援する福山市の労働組合「福山ユニオンたんぽぽ」に相談。同労組のシェルターに身を寄せた。

 暴行の一部は同僚の実習生が動画に撮っており、同労組は「実習生を守るべき義務を果たしていない」として、会社と、会社を監査する立場の監理団体に謝罪や慰謝料を求めている。

 外国人技能実習機構も11月、男性に事情を聴いた。同機構広島事務所(広島市)は取材に「個別案件には答えられない」としているが、同労組によると、機構は監理団体から報告を受けていないと説明したという。

 取材に対し会社の代理人の弁護士と監理団体は「事実関係を含めてコメントしない」としている。