「これ握るの?」大将も食べてびっくり 「陸上寿司」の知らない世界



 初めて「おすしは、おいしいんだ」と思った衝撃は忘れられない。

 いなりずし、ハンバーグの握り――。魚が苦手だった作家の岸田奈美さん(30)は、小学生のとき、地元の兵庫県にオープンした回転ずし屋で「自分でも食べられるおすしがある」と驚いた。すしといえば、法事やお盆で親戚が集まった時に出前をとるイメージで、いつも玉子しか食べられるものがなかった。

 特に気に入ったのは、コーンをマヨネーズであえた軍艦。コーンの甘さと酢飯の酸っぱさが絶妙で、全皿これしか食べなくていいとさえ思った。

 だが、大人になってコーン軍艦に手を伸ばすと、「それ、子どもが食べるやつじゃん」と友人から笑われた。「損してるよ」「新鮮なおいしい魚を食べたことがないんだね」とも言われた。

 磯の香りや生臭さがダメなだけで、単に好みの問題なのに。

 好きなもんを食べて何が悪いと思いつつ、気恥ずかしくて「この味がたまに懐かしくなるんだよね」とごまかしてきた。
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