“4人に1人が死ぬ山”K2の冬季初登頂 「ギャラも出ないのに山に登る意味はない」ネパール人が本気になった
「ギャラも出ないのにわざわざ山に登る意味はない」
2001年に冬のローツェ(8516m)にトライしたことのある山岳ガイド、花谷泰広は、ローツェで一緒に登ったシェルパについて、自身のYouTubeチャンネルでこのように語っている。
「それまで僕のなかでイメージしていた『人間の枠』を彼があっさりと打ち壊した。人間って、こんなに強くなれるんだと感じたのを覚えています」
当時の花谷は25歳。体力面では絶対の自信があったころだが、まったくかなう気がしなかったという。
だが、シェルパにとって登山は、趣味でもなければ自己表現のフィールドでもなく、あくまで仕事の場。登りたいという人をサポートすることで対価を得ることが目的である。いわば裏方の職人なわけで、彼らは自身で登山隊を率いることはなく、登山家として脚光を浴びることもないというのが、長年の常識だった。
実際、花谷が「それだけ登れるなら、登山隊のサポートではなく、自身がクライマーとして登ったほうがいいのではないか」と聞いたところ、当のシェルパはそれはありえないと即答したという。ギャラも出ないのにわざわざ危険を冒して山に登る意味はないということだ。
https://number.bunshun.jp/articles/-/846770?page=1