玉姫公園とは山谷にある公園だ。ブルーシートで覆われた小屋がいくつか立っており、ホームレスが暮らしている。上野公園の炊き出しは私も行った火・木・金・土に開催されている韓国系キリスト教会主催のものだ。

「君は昼飯食べたのか? 余っているからこれやるよ。いいいい、食えって」

おじさんと一緒にいた二人も「どうせ捨てちゃうからもらってくれ」と、私に飲み物や弁当をくれた。都庁下と同じく東部エリアも飯に困ることはまずなさそうだ。

「俺たちは三百六十五日炊き出し回ってるんだよ。全部知ってるぞ」

週四日の韓国キリスト教会の炊き出しに加え、ここ白鬚橋でも毎週木・土に炊き出しがある。土曜日は十四時からもあるので日に二回だ。山谷地域も炊き出しが豊富だ。山谷労働者福祉会館、山日労(東京・山谷日雇労働組合)、キリスト教会、朝ご飯を出してくれる炊き出しもある。

明日から三日間は玉姫公園で「山谷夏祭り」が開催される。飯と酒が食べ飲み放題で、出店なども出る。音楽隊の演奏会やレクリエーションまであるという。少し離れるが八丁堀の公園でも毎週カレーが食べられる。

このおじさんのイチオシは水曜の昼に上野駅前でもらえるほっともっと弁当。そして大久保にある韓国系キリスト教会。なんとここは月に一回現金をくれるそうだ。今は人が増えすぎて一人三千円だが、一万円くれた時期もあった。みんな服装を変えて何回ももらおうとトライして、このおじさんは五万円までチャレンジに成功した。

この教会は以前こんな制度もあったという。月四回炊き出しに来ると皆勤賞で千円もらえる。次の月も皆勤賞なら二千円、その次は三千円とステップアップしていく。

さらに魅力的なのが、とあるキリスト教会で炊き出し時に行われている聖書クイズ(取材当時はコロナ禍でクイズは休止中)。聖書にまつわるクイズが出題され、当たると数千円のお小遣いがもらえるので白熱するのだという。そして、このクイズがかなりマニアックで難しい。

「みんなクイズに正解して金もらいたいからよ、教会から聖書もらって勉強するんだぞ。そうでもしないとまず正解できないレベルだからな」

街で聖書を読んでいるホームレスは何度か見かけたことがある。「ホームレスは聖書読みがち」とすら思っていた。みんなテスト勉強をしていただけだったのだ。

そしてこの教会で出るカレーが抜群に美味いという。このおじさんだけではなく、ほかのホームレスと炊き出しの話をするたびに、さらには黒綿棒までもがみんな口を揃えて、「あのカレーはもう食べた? あれを食べたらもうよそに行けなくなるよ」と目を輝かせて言うのだ。

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