「安全保障の専門家は“始まる”という前提で考え始めている。2月10日〜20日が非常に危ない」ロシアによるウクライナ侵攻の可能性、小泉悠氏に聞く

 やはりここからはプーチンさんの“世界観”の問題に入ってくるだろう。国内の経済が多少悪くなろうとウクライナを取り戻すんだという決意があるとすれば、もう止めることはできないだろうというのが大方の見方だ。だから外交セクターの方や経済セクターの人たちが“何とかロシアを止められないのか”と一生懸命考えている一方、非常に残念な話だが、私のようにロシアの軍事などを見ている人たち、あるいはアメリカの安全保障の専門家たちは、“始まる”という前提で考え始めている。

 当のウクライナも、“NATOに入りたい”と憲法に書くなど、何が何でもロシアの勢力圏から逃れるということを国是にしているが、ロシアは諦めて、中立という条項を憲法に書けと2015年くらいから言い続けている。ウクライナとしては当然、そんな話を飲むわけはない。

 私としても何らかの落としどころが見つかればいいとは思っているが、あまりにもロシアの要求が強行過ぎて、落としどころらしきものが全く見えてこないし、軍事力の行使を回避できそうな雰囲気も見当たらない。それが非常に不気味で怖い。

 そして、来月の10日から20日にかけて、ロシア軍がベラルーシにおいてベラルーシ軍との大演習をやることになっている。大体、過去に大戦争が起こる時は“演習”という名目で始まることが多いので、この期間が非常に危ないと思う。ロシア軍が通常戦力の演習を行う場合は核部隊の演習をするが、去年はやっておらず、今年は“延期する”と言っている。もしかすると、ここで核部隊の大演習を行い、NATOに対して“手を出すな”と言いながら、ウクライナに対しては通常部隊での侵攻、もしくはハイブリッド戦を仕掛けるというシナリオがありえそうだ。

https://times.abema.tv/articles/-/10012764