米国中部のインディアナ州からネブラスカ州にかけて広がるコーンベルト地帯では、世界の3分の1以上のトウモロコシが作られている。
1880年代と比べて、土地の広さは2倍程度であるにもかかわらず、生産量は20倍を超えた。ここでは、現代の科学がもたらすさまざまな驚異が繰り広げられている。

 過去の例を鑑みると、こうした収穫量の増加は、農法の改善と品種改良によるところが大きかった。一方で最近の数十年間において、
収穫を大幅に増加させた主な要因は、遺伝子を正確に操作できる遺伝子工学技術だと考えられてきた。現在、米国の農作物の大半に、何らかの形で遺伝子技術が使われている。

 ところが、1月25日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された論文によると、過去15年間にトウモロコシの収穫量を増加させてきた主な要因は
まるで異なるものだったという。それは、気候変動によって長くなった成長期と温暖な天候だ。

 これは必ずしも良いことではないと、科学者は警告する。まず、世界の温暖化の進行に伴って、コーンベルトの環境がトウモロコシに適さなくなり、
収穫量の増加が見込めなくなる可能性がある。

 さらに深刻な問題は、科学者たちが、将来的に収穫量を増やすうえでの重要な手段として、遺伝子工学に期待を寄せてきた点だ。
増え続ける人口のために十分な食料を生産し続けなければならない世界にとって、収穫量の増加という課題は避けて通れない。
今回の研究は、コーンベルトにおいては、遺伝子工学というツールがこれまで考えられてきたほど有用なものではなかったことを示唆している。