https://www.cnn.co.jp/fringe/35183329.html

米フロリダ州レークランド付近で昨年、マーガレット・シュープ・スミスさん(59)が姿を消したとき、家族と警察は困惑した。

スミスさんは21年4月2日の仕事後に娘のマーリー・シュープさんを迎えに行くことになっており、モスグリーンの起亜「ソウル」を運転する姿が最後に目撃されていた。
姿を見せないのは母親らしくないと思ったと、娘のシュープさんは語る。スミスさんは気が強い女性で、孫と一緒に過ごすのが大好きだった。

「母親は大きな心を持ち、優しさと思いやりと愛情にあふれていた」(シュープさん)

スミスさんの親戚のミシェル・サンダースさんは、潜水チームの活動を記録するユーチューブの人気チャンネル「アドベンチャー・ウィズ・パーポス(AWP)」の大ファンだった。

AWPは全米で家族による行方不明者の捜索を支援することを使命に掲げ、2019年以降、19件の未解決事案の解決を助けてきた。
創設者のジャレド・ライジック氏によると、チャンネル登録者数は180万人近く、月間の視聴回数は1500万回に上る。

スミスさんが消息を絶った後、サンダースさんは望みは薄いだろうと思いつつも、夏の間に本件の詳細をAWPに送付した。
AWPはこの件を引き受けることに同意。
CNN取材班が捜索に同行した。

ダイバー1人とカメラマン2人、ライジック氏を含むチームは先月、キャンピングカーとトレーラーに荷物を詰め込み、
オクラホマ州からテキサス州、フロリダ州に至る45日間の米南東部横断の旅に出た。

「今回の旅ではいつもより少し南に来ている」とライジック氏。「他の案件ではフロリダ州に行ったことがなかったので、フロリダは初めてになる。
今回もうまくいくことを願っている」

チームは最初から未解決案件の解決を目指していた訳ではない。ライジック氏がチャンネルを立ち上げたのは3年前。
水路に散乱するゴミ約900キロを3カ月で回収することを目標に、ダイビングの旅を撮影し始めたのがきっかけだ。

このミッションが水中に沈んだ車の発見につながった。
携帯電話やサングラス、缶などのゴミが見つかる中で偶然、ライジック氏はオレゴン州ポートランドの水中約12メートルに沈んだ車に遭遇した。

濁った水路から発見された物体を見ようと視聴者が集まり、ユーチューブチャンネルの人気は上昇していった。

チームの潜水技術はやがて、ミズーリ州ウォーレン郡に住むネイサン・アシュビーさん(22)の家族の目に留まった。アシュビーさんは2019年7月31日に失踪。
早朝にピックアップトラックで出勤する姿が目撃されたのを最後に行方が分からなくなっていた。

当局は8月、ソナーを使ってミシシッピ川に沈んだピックアップトラックを発見したものの、川の状況から潜水による回収は安全性に欠けると判断された。

19年12月29日、川に潜ったAWPはトラックがアシュビーさんのものであることを確認。車内からアシュビーさんの遺骨も見つかった。

これを皮切りに、チームは未解決のままとなっていた19人の失踪事案の解決を支援した。ライジック氏によると、現時点での解決率は20パーセント程度だという。

グループは家族や警察に料金は請求せず、SNSのチャンネルや寄付を通じて全ての活動資金を調達している。

引き受けるのは事件性の疑いがない案件のみ。ライジック氏は、失踪から時間が経つほど、何が起こったのかに関する臆測やうわさも増えると語る。
多くの警察署はリソースや、AWPが水中捜索に使うような機材を持っていないのが実情だという。