菅は今夏の参院選で、岸田文雄の力を削ぐために力を注いだ。その際、威力を発揮したのが、菅が太いパイプを築いている創価学会だった。

改選2の広島選挙区の自民党現職は、岸田派最高顧問の溝手顕正だった。菅は「広島では自民党が2議席独占できる」として、2人擁立を主張した。自民党選対に働きかけ、自らに近い広島3区選出の衆院議員・河井克行(現法相)の妻で、県議会議員の河井案里を2人目の候補として擁立したのだ。

これには、岸田系が大多数を占める広島県連が猛反発。自民党系県議のほとんどが溝手陣営についた。

菅は事態打開のため、この6年で太いパイプを築いてきた、創価学会の選対責任者である副会長の佐藤浩に河井の支援を要請。佐藤は広島の学会及び公明党に、河井を支援するよう指示を出した。

当初、公明党の地方議員の中には「河井夫妻は地元で評判が悪い」として、佐藤の指示に抵抗を示す者もいた。だが佐藤は、そうした地方議員にまで個別に電話をかけ、河井を全面的に支援するよう説得。

「今回の参院選で、公明党は兵庫選挙区で大変な苦戦を強いられている。そこでは菅さんの支援が不可欠なのだから、河井案里がどんな候補者かなど関係ない。広島では、菅さんの要請通りやるしかないんだ」とまくし立てたという。

「岸田の芽はなくなった」
結局、広島の創価学会は票を河井に集中させた上、河井の街頭演説に地元の公明党県議や市議を同行させるなど全面協力。報道各社の期日前出口調査によれば、公明党支持者の70〜80%が河井に投票した。これが河井当選の決定打となった。

溝手陣営は投票日の数日前になって、岸田や元県議会議長らが創価学会の総広島長・塩出大作に「溝手にも半分は票を回してほしい」と懇願したが、手遅れだった。
菅は大手ゼネコンなど広島県内に支店を持つ大手企業にも「溝手は安泰だから、河井に票を回してほしい」と要請し、多くの大手企業が河井を支援した。

菅による2名擁立作戦の狙いは、まさしく「岸田潰し」にほかならなかった。溝手は落選し、選挙後には広島県連内でも「これでもう岸田の(首相の)芽はなくなった」との声が広がった。
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悪いのは、菅と菅と組んでしまった公明