https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59061618

エコフレンドリーなセックスとは? 性生活の環境負荷を考える

私たちがカーボンフットプリント(行動を通じて排出される二酸化炭素など温室効果ガスの量)を減らす方法を考える時、性生活はリストの上位にやってこないだろう。
しかしここ数年で、動物性素材を使わないヴィーガンのコンドームや、ごみの出ない避妊具といった持続可能性の高い製品の需要が、徐々に上がってきているという。
エコフレンドリーなセックスとは?
ナイジェリアで環境的持続可能性を研究するアデニケ・アキンセモル博士は、「エコフレンドリーなセックスとは、ある人にとっては環境負荷の低い潤滑剤やセックストイ、ベッドシーツ、コンドームなどを選ぶことを意味する」と説明する。
「一方で、環境や労働者に有害なポルノ製作を止めることを意味するという人もいる。どちらも正しく、重要だ」
国連人口基金(UNFPA)によると、年間100億個の男性用ラテックス製コンドームが作られており、そのほとんどが埋め立て処分されている。
コンドームのほとんどは原材料が合成ゴムで、化学物質や添加物が含まれているため、リサイクルできないからだ。
完全に生分解されるコンドームは、古代ローマ帝国時代から使われているヒツジの腸を使ったのものだけだ。しかし、このタイプのコンドームは性感染症をを防ぐことはできない。
潤滑剤も多くは石油を原材料とするため、化学燃料を含んでいる。そのため現在では、水を原材料とするものやオーガニック製品が増えている。さらに、自宅で作れる潤滑剤も人気が出ているという。
テッサ・コマーズ博士は、動画アプリ「TikTok」に性の健康に関する動画を投稿し、100万人以上のフォロワーを持つ。中でも、コーンスターチと水を使った自家製潤滑剤のレシピ動画は、800万回以上再生された。
アキンセモル博士は、「水由来の潤滑剤やオーガニック・コンドーム、ヴィーガン・コンドームなどは、楽しみながら持続可能な性生活を送るための良い手段だ」と語る。
「環境負荷が減るだけでなく、ユーザーにとても楽しい時間をもたらしてくれる」
しかし、こうしたグリーンな製品を使う際には注意が必要だ。中には、破損の恐れがあるため、大半のコンドームと併用できない製品もある。避妊に関する判断の前には、医師や家族計画の専門家と話すことが望ましい。
セックストイも、プラスチックが多く使われている製品分野だ。金属やガラスを使う代替品もあるほか、充電可能な製品を買うことでごみを減らすこともできる。市場には、太陽光で充電できる製品も出回っている。
セックストイのメーカーの中には、通常のリサイクルには出せない中古品や壊れた製品の回収を支援するところもある。
他にごみを減らす方法は?
他にも、直接的ではないが、性生活の中で環境負荷を減らす方法はいくつかある。
環境に配慮した「エシカル」なランジェリーを着る、シャワーを浴びながらやお湯を使ったセックスを避ける、電気を消す、繰り返し使える布を使うなどだ。
私たちの日々の生活で、最もごみになるのは包装だ。ニューヨーク在住の起業家で、ごみの出ない生活を推進するインフルエンサーでもある、ローレン・シンガー氏は、企業がごみ削減に貢献できる最大のポイントが包装だという。
コンドーム、潤滑剤、避妊ピルなどの包装は全て埋め立て処分されている。子宮内に装着する避妊具などは、長期的な効果があるだけにごみも少ないが、使用に伴うリスクもある。
シンガー氏はほぼごみの出ない生活を送っている。2012年以降、リサイクルできなかったものはビンに入れて保管しているという。
このビンの中にコンドームは入っていない。コンドームは性感染症を防げる唯一の避妊具でもあるため、シンガー氏はセックスの相手には事前に検査を受けてもらっているという。
「私は今、パートナーが1人いる状態だけれど、セックスする前に検査を受けてほしいとは、なかなか言いにくいと感じるなら、そもそもその人とはセックスをしない方がいい」とシンガー氏は話す。
一方で、望まない妊娠や性感染症ほど、持続可能性のないものもないと語った。
「私たちは、ごみを出しても有意義な行動と、ごみを出すほどの価値がない行動を、分けて考える必要がある。ごみ問題の観点から、コンドームや避妊具を使わないのはおかしい。あなたとパートナーを守ることの方が大事だ」
アキンセモル博士も、この意見には賛成だ。
「エコフレンドリーな製品を使う使わないにかかわらず、長期的には安全なセックスこそ、私たちと地球にとって最も持続可能性のあるものだ」
子どもを持つことの気候への影響
性生活と環境負荷について考えれば、次に思い浮かぶ論点は子供を持つの是非だろう。