マイクロチップ確認されず、処理された愛犬 飼い主ら制度の盲点嘆く
2/19(土) 5:00配信

「迷子の『こつぶ』がごみ扱い」。
高松市内の動物愛護団体が1月下旬、SNSに書き込んだ。
迷子犬の体内には個体識別用のマイクロチップが埋め込まれていたが、
車にはねられて死んだ後、送られた先はごみ処理施設だった――。

ほっそりした茶色い体に大きな耳が特徴の雌犬「こつぶ」。
野犬の子犬として生後1カ月でさぬき動物愛護センター「しっぽの森」(同市)に引き取られた。
市内のドッグサロンで人に慣れる訓練を8カ月受けた後、
小中高生が参加する「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」
(同市)の仲介で昨年末に市内の一家へ譲渡された。  

飼い主の女性(46)によると、当時2歳のこつぶは、
始めはケージ内でビクビクと落ち着かない様子だったが、
徐々に環境に慣れ、散歩を楽しみにするそぶりを見せるようになった。  
だが、1月下旬に市内を散歩中、女性の持つリードを
こつぶが引っ張った際に首輪が抜け、そのまま逃走。
女性は保健所や警察に連絡し、ワンニャンピースマイルの協力も得て、
ポスター掲示やSNSで目撃情報を集めた。  

3日後の朝、女性の元に高松南署から電話があった。
「昨夜車にひかれた犬の特徴が、警察への届け出の情報と一致した」。
なきがらは道路を管理する土木事務所が既に回収していた。
事務所に電話すると「もう処分した」と告げられた。
女性は「直接確認しないと愛犬かどうか分からない」と訴えたが、
担当者は「回収時には既に袋に入っていたため、衛生面からそのまま処分した」として、
なきがらとの対面はかなわなかった。  

事故現場で撮られた写真を確認し、体の大きさや色、模様からこつぶと判断するしかなかった。
小学4年生の息子は愛犬の死を知って
「せめて埋めてあげたい。会えないの。骨のひとかけらもないの」と泣いた。
女性は「逃がしてしまったことに飼い主として責任を感じているが、
最後に会いたかった。こつぶの死を無駄にしたくない」と話す。  

こつぶの体には小さなマイクロチップが埋め込まれていた。
阪神大震災(1995年)で多くのペットが行方不明となり普及の議論が高まった。
90年代後半から実用化され、環境省も装着を推進している。
直径1〜2ミリ、長さ8〜12ミリの円筒形で、犬猫の首元の皮下に注射器状の器具で埋め込む。
専用の機器をかざして個体識別番号を読み取り、データベースに登録された
飼い主の名前や住所を呼び出し、ペットの発見に役立てる仕組みだ。  

こつぶにはチップが装着されていたのに、飼い主の元になぜ返されなかったのか。
県警によると、迷い犬・猫を保護した場合は、全12署に1台ずつ読み取り機を配備しているが、
交通事故で死んだ場合は確認していない。
路上で死んだ犬猫の回収は道路管理者や自治体が業者に委託するのが一般的だが、
「回収業務は道路の安全管理にとどまり、死骸の損傷が大きい場合もある」
(高松土木事務所)などの理由から、そのままごみ処理施設に送られてしまうのが現状だ。  

チップの取り扱いについては国の指針があるが、路上で死んだ犬猫は想定していないため、
こうした事態が起きているようだ。環境省の動物愛護管理室によると、
生きた犬猫が保護された場合は各地の保健所や警察署が確認することになっている。
「逃がさないための管理が優先で事故死は取り組みの範囲外」(同室担当者)という。

https://news.yahoo.co.jp/articles/39be98896cd13631e46d61107a179734af4a9b0a

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