正教会の分裂 ウクライナ危機の背後で
2022年2月18日 12時19分

全世界に約2億6千万人の信徒がいる正教会は日本では信者数9千人弱(『宗教年鑑令和3年版』)とマイノリティーで、一般にはニコライ大主教やニコライ堂など教会建築が知られる程度だろう。

米のピュー・リサーチセンターによると、2017年時点で世界の正教徒の4割がロシアに住み、ウクライナやエチオピアにも各々3500万人程度の信徒がいる。旧ソ連圏のロシアとウクライナを合わせると過半数を占める。

その両国がいま戦争の危機にある。ロシアはウクライナ国境の軍を増強し、関係諸国の戦争回避の外交努力の中、緊張は依然続く。外務省はウクライナを最高レベルの危険度4に指定し、邦人に国外退避を呼び掛けている。

両国の関係については歴史を遡って考える必要があるが、ここでは論じる余裕はない。しかし、14年のロシアのクリミア併合後、宗教上の重要な出来事が起きていることに触れておきたい。

それまで日本正教会と同様にロシア正教会の管轄下にあったウクライナ正教徒の多数派の独立が18年末、コンスタンチノープル総主教の下で認められたことだ。
同総主教は対等な9人の総主教中の首位者だが、モスクワ総主教庁はこれに反発し、断交を宣言したと伝えられる。
一方、当時のウクライナ大統領は「悪に対する善の勝利」と歓迎した(ナショナルジオグラフィック日本版サイト)。政治・軍事的緊張とともに宗教上の軋轢があるようだが、教義ではなく国家の力を背景にした教会間の力関係の問題である。