5月15日、安倍首相の私的諮問機関「安保法制懇」が、「集団的自衛権」の行使を「憲法解釈の変更」によって認めるよう求める報告書を提出した。
これを受けて、安倍首相は同日夕に、上記のパネル図を用いた記者会見を開いたのであった。「安保法制懇」の結論は、はじめから決まっていたも
のなので、報告書には何の驚きもない。が、予想以上に出来が悪い。「集団的自衛権を認めるべし」とする理由くらい、もう少し論理的に書くかと思っ
たが、「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」の一言だけである。それと「集団的自衛権」がどう関係するのか。かりに、中国や北朝鮮の動きが
日本にとって軍事的な脅威になっているとして、だからアメリカが攻撃されたときに自衛隊を派遣してアメリカを助けなければならない(集団的自衛権)、
という論理は、いったいどこから出てくるのか。中国や北朝鮮が日本に攻撃を仕掛けてくるかもしれないと言っておいて、それがなぜアメリカを守らなけ
ればならないという話になるのか。「抑止力」を高めるため? 安倍首相も記者会見で、さかんに「抑止力」、「抑止力」と言っていた。アメリカが攻撃さ
れたときに日本が助けに行けば日本が攻撃されたときにはアメリカが必ず助けに来てくれる、そういうように関係が強固になれば「抑止力」も強化され
る、ということなのだろう。だが、こんな「お人好し」の感覚は、それこそ「国益」の絡み合う国際関係の舞台で通用しない。アメリカはアメリカの「国益」
に適えば日本を助けるだろうし、そうでなければ助けない。それだけの話である。
http://www.jicl.jp/old/urabe/backnumber/20140522.html