ロシア軍によるウクライナ侵攻の狙いについて、ロシアを専門とする東大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠、笹川平和財団主任研究員の畔蒜(あびる)泰助両氏に聞いた。

【表でみる】緊迫度を高めてきたウクライナ情勢

■小泉氏「地上戦になれば人道危機」

ロシアによる今回のウクライナ侵攻は、小規模な衝突ではなく全面戦争と呼ぶのが妥当だ。ウクライナの防空システム制圧が第一段階のようだが、今後は地上戦に突入する恐れがある。ロシア国境に近いハリコフや首都キエフなどの主要都市に侵攻する可能性が高い。

侵攻の目的がゼレンスキー政権の転覆なのは明らかだ。地上戦が市街地で展開されれば市民が犠牲になる恐れがある。市民らがゲリラ戦で抵抗すれば民間人の死者が増え、大きな人道的危機に陥りかねない。

ロシアは2014年のクリミア侵攻では偽情報を流し、ウクライナ政府への不信感を植え付ける情報戦で「無血占領」を果たしたが、他の地域では通用しなかった。当時の経験から、今回は軍隊による古典的な侵攻を選んだ。ウクライナを複数の小国に分裂させ、弱体化を狙う考えが今回もないとは言い切れない。

米国にとって対話の段階は過ぎた。米露首脳会談で止められる状況ではなくなり、強いメッセージを突き付ける段階にある。一つは厳しい経済制裁で代償を払わせることだ。ウクライナへの軍事支援をどこまで行うかも重要だが、長引けば大量の犠牲を招く。難しい選択を迫られる。

第三次世界大戦の可能性は低いが、第一次大戦も偶発的事象が契機となった。ロシアがそうした火種を作っているのは間違いない。最悪の場合、ロシアが警告射撃の意味合いで、無人地帯で限定的な核使用に踏み切る可能性も排除はできない。

一方、日本が発表した第一次制裁はきわめて手ぬるい。国際秩序を脅かすロシアに厳しく出ないのでは全く筋が通らない。半導体の供給制限、ロシア経済の根幹のエネルギー分野の制裁も検討すべきだ。(聞き手 桑村朋)

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