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セックスビデオが流出した名門校教師の運命は…「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版」予告

第71回ベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞した、ルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデ監督作「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版」の予告編がお披露目された。プライベートセックスビデオがネット上で拡散した、ブカレストの名門校教師エミが、異端審問さながらの保護者会で非難される姿に続き、「人間の本性は“卑猥”である」というテロップが浮かび上がっている。

本作は、セックスという極私的で本能的な行動が他人の目に晒されることで、事態が思いもよらない方向へ転がってゆくさまを通して、社会の偽善や偏見を浮き彫りにし、ブラックユーモアでタブーへと切り込んでいく。世界が同時に経験した新型コロナウイルスによるパンデミックとその後の社会の閉塞感を背景に、「“卑猥”とは何か?」を改めて問いかける。

ベルリン国際映画祭は、冒頭のあけすけな本番セックスシーンに始まる本作に金熊賞を授与。その後、世界中で大きな反響を呼び、第94回アカデミー国際長編映画賞のルーマニア代表作品、さらに米ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ2021年ベスト10の第2位(第6位は「ドライブ・マイ・カー」)に選出された。日本では「イメージフォーラム・フェスティバル 2021」で特別上映後、その過激な内容に、日本での劇場公開は不可能と思われていた。しかし、ジューテ監督本人の手により追加編集がなされ、ツインの映画配信サービス「JAIHO」配給第2弾作品として劇場公開が決定した。

物語は三部仕立てで展開し、第一部ではエミが街を歩き回る姿を追いながら、コロナ禍のなかですれ違う人々や街の顔をとらえている。続く第二部では、膨大なアーカイブ映像やコラージュがちりばめられている。ジューデ監督の頭のなかをのぞくかのように、パゾリーニ、ベンヤミン、ブレヒト、クンデラ、サルトル、ウルフら、歴史、神話、映画監督、思想家の格言やジョークも放出。最後の第三部で、エミと保護者たちが対峙する、終わりなき“裁判”が開かれる。

さらに“監督〈自己検閲〉版”と大々的に謳われた本作は、シーンの要所要所に「殺人シーンはOKで、フェラはNGだって?」「見られなくて残念!」「検閲版だよ!」といったアイロニカルで挑発的、ユーモア溢れるメッセージが文字通り本編に映し出されてゆくスペシャルバージョンとなっている。

予告編の冒頭では、エミが薬局で「抗不安薬を」「1錠でいいんです、今夜かなり緊張しそうで」と訴え、セックスビデオ流出の事情説明のために校長宅に向かう様子を活写。映像は、街をさまようエミを追い続け、彼女に募る不安といら立ちが社会全体に蔓延しているかのような、一触即発の緊張感が漂っている。皮肉たっぷりかつ挑発的に重ねられる、突拍子のないモンタージュの数々にも注目。そして保護者会のシーンでは、「みんなで動画を見ましょう」というエミにとって最悪の展開を迎え、議論が紛糾していくさまがコミカルに切り取られている。

「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ 監督〈自己検閲〉版」は4月23日から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開。なお「JAIHO」ではジューデ監督特集が決定しており、19世紀初頭のロマとルーマニアの歴史を描き、第6回べルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した「アーフェリム!」(15)が2月17日から、1941年からのルーマニアの歴史的出来事を基に描かれた問題作「野蛮人として歴史に名を残しても構わない」(18)が4月16日から、ともに60日間配信される。