あまり知られてはいないが、オランウータンのオスには2種類のまったく異なるタイプがいる。

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ひとつは平均体重70キロと(平均体重40キロの)メスよりもはるかに大きく、頭の上が脂肪組織でふくらみ、頬から横にひだが張り出して、キャッチャーマスクをかぶっているように見える(写真などでおなじみの)大型のオスだ。

こうしたオスは大きな喉頭嚢を持ち、それがロングコールを発するときの共鳴装置になる。
メスはこの大型のオスに惹かれ、ロングコールのするほうに近づいていく。

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もうひとつのタイプは小型のオスで、体格はメスと同じくらいだが思春期にさしかかったばかりの若者ではなく成熟した大人である。
このタイプのオスは途中で成育が止まるが、テストステロン値でみるかぎり生殖能力は完全で、突然急速な成長を開始して大型のオスになることもある(オスの成長が止まるのは近くに大型のオスがいるためだという徴候があるが、大型のオスがいても成長する場合もある)。

オランウータンの観察が始まった当初は、小型のオスは単なる若いオスだと思われていたが、やがて彼らが特殊な性行動をとることがわかってきた。

先に述べたように、オランウータンのメスは大型のオスに惹かれるから、小型のオスは人気がない。そこでどうするかというと、メスをレイプするのだ。
自然界におけるオランウータンのレイプを最初に報告したのはイギリスの動物学者ジョン・マッキノンで、彼は次のように書いている。

「メスは恐がってオスから逃げようとしたが、追いかけられて捕まり、ときには殴られたり咬まれたりする場面もあった。メスはときどき悲鳴をあげた。
メスと一緒にいる子どもは、悲鳴をあげながら交尾をしているオスに咬みつき、毛を引っぱり、蹴る。オスは物をつかむのに適した足を使って、メスの腿をつかむか腰にまわすかするのだが、メスは腕を使って体を引き抜こうとして暴れ、移動していく。
オスもそれにあわせて移動する。樹上ではじまった交尾が地上で終わった例も一例あった。こうしたレイプはおよそ10分間つづく」

マッキノンは調査期間中に8例の交尾を観察したが、そのうち7例はこうしたレイプ≠セった。

ソース
https://honto.jp/netstore/pd-book_27780017.html