「技能実習生」は世界的にも悪名高い在留資格だと言われてきた。
実質的に労働をさせていながらも、国は外国人労働者として認めず、あくまで「実習生」という建て前で制度を運用しており、「職業選択の自由」を認めていない。
そのため劣悪な環境に耐えられなければ逃げ出すしかない。

しかしひとたび逃げ出せば、結果として不法残留となり、正規の職を得ることはできなくなる。
「逃げ出しても多額の借金が残っているので、不本意ながらも反社会的な行為に手を染めながら生きていく道を選ぶしかない」(グエットさん)。

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台湾は、2018年に日本が「入管法改正案」を閣議決定するまで、日本を上回る水準のベトナム人労働者を集めていた。
日本の外国人労働者数は約172万人で、人口に占める割合は1.4%だが、台湾は約72万人(人口は約2300万人)を集め、その割合は3%を超えている。日本と何が違うのだろうか。

台湾では、1991年に「就業服務法」が成立し、増える労働者の需要と不法就労の防止、台湾住民の雇用保障を焦点にした新制度の運用が始まった。
1992年には「外国人招聘許可および管理法」が施行された。ちょうど、日本では「技能実習制度」が立ち上がった時期である。

こうした法制度のもとで、台湾の行政は企業側に対し、雇用のプロセスと責任を明確に示してきた。
例えば、台湾の製造業における受け入れでは、基本給は月2万5250台湾ドル(日本円で約10万1000円)と決められ、月に4〜5日の休日を与えることを必須とし、
本人が休暇を取得したがらないケースに対しては、1日567台湾ドル(約2268円)×4〜5日分を払うという規定が設けられている。
また、人材仲介会社が仲介料として徴収できる金額については月額の上限がはっきりと数字で示されている。

台湾では、人材仲介会社や行政のホームページでも、企業側が外国人労働者に対して支払わなければならない項目と金額、労働者本人が負担しなければならない諸費用が分かりやすく示されている。
労使間に存在した曖昧な部分をガラス張りにしようという取り組みの一端が伺える。

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早晩、日本を取り巻くアジアが富裕になれば、労働者たちは“いじめ体質”の企業風土やアジア人軽視の日本の空気にも耐える必要はなくなる。
アジアの担い手を失うとき、日本はさらに遠くのアフリカに労働力を求めるといった“焼き畑的手段”に出るか、あるいは日本人だけで人手不足を解消するかの選択を迫られる。

日本の受け入れ制度は改善に向かいつつも、“人と人のかかわり”は今なお克服できていない。“上げ膳据え膳”など極端な状況に陥る前に足元を見直したい。
人手不足の解消も最終的には人と人。カギは日本人が異文化理解を深め、共生を模索することにある。

https://president.jp/articles/-/54780