――日本に住む私たちが、今知っておかなければいけないことは何でしょうか。

山添 ロシアの嘘が無数にあるということもそうですが、私は「情報空間工作」というものも研究をしています。アメリカのトランプ政権が生まれた時や、フランスのマクロン政権が生まれたときにも、ロシアが情報空間工作をやっていたということについて研究を重ねてきました。

 そこで、社会の脆弱性や分断というのは、誰かに利用されてしまうという危機認識を持ちました。こうした問題意識は、今後、日本社会でも必要だと思っていましたので、それをお伝えしたいです。

 これは他人事ではないのです。これを他人事のように見て、ロシアの肩を持つような言説を広げるのは危ないです。中でも一番危険なのは、「ウクライナは早く降伏するべき」といった言説です。ロシアにも理由はあるんだし、ロシアに逆らっても仕方ない、キエフはどうせ落ちるんだから、といったような、早期降伏論が日本で有力になってしまうと、それは日本自身の次の危機に利用されます。

 現在の危機に、何が社会の言説にとって必要なのかを、ウクライナの立場で考えることが、日本社会を守るためにも必要だと私は思っています。

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