もっとも、現在もウクライナ政府が崩壊していないことを考えると、ロシアなどの作戦はうまくいっていないということだ。事実、ウクライナ側はこうした工作にも善戦している。

たとえば報道によれば、戦闘に加わっていたカディロフの側近の一人で第141連隊司令官のマゴメド・ツシャエを、キエフ近郊ホストメルの空港で殺害したとウクライナ軍は発表している。

このツシャエ司令官はカディロフ大統領の指令のもと、イスラム教徒が多いチェチェンで同性愛者らを迫害して殺害してきたと批判されている人物である。その司令官と彼の率いる部隊が、ウクライナ軍の特殊部隊「アルファ」によって潰された。

ゼレンスキーの排除を狙うカディロフツィの動きについて、ウクライナ側は意外なところから情報提供を受けていると明らかにしている。

それはロシアの情報機関であるFSB(ロシア連邦保安庁)の関係者だ。ウクライナの国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記は、ロシアのテレビ局で次のように語っている。

「チェチェンのカディロフツィが、ゼレンスキー大統領を暗殺する特別作戦を行っていることを、われわれはわかっている。というのも、今回の血なまぐさい戦争に参加したくないFSBの内部から情報を受け取っているからだ」

「そのおかげでカディロフの特殊部隊を破壊できている」

つまり、ロシアの情報機関FSBの内部に、プーチンのウクライナ侵攻に反発している人がいるということである。そこから、ウクライナにインテリジェンスがもたらされているということだ。ダニロフによれば、カディロフツィの特殊部隊が二手に分かれて作戦を実行していることも把握しているという。

https://courrier.jp/cj/281076/