これまでも国内メディアに、軍事行動については政府の公式発表のみを報じるよう強いていた。ウクライナ侵略は「特別軍事作戦」であり、「侵攻」「戦争」と呼ぶことを禁じていた。

官製ニュースに頼る多くのロシア国民は、ロシア軍による原発攻撃や住民殺傷の事実を知らない。若者を中心に一部の国民は外国メディアやSNSを通じて侵略の実態を知り、各地で戦争に反対するデモを広げてきたが、これも封じられようとしている。

プーチン政権は、ウクライナ政府が親露派支配地域で「ジェノサイド(集団殺害)」をしていると主張し、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」と呼ぶプロパガンダを続け、憎悪を煽(あお)っている。

ロシア軍の損害はほとんど報じず、原発攻撃は「ウクライナ側の仕業」などと大統領自らや国連大使が臆面もなく主張している。これこそが虚偽情報ではないか。

プーチン氏にとって、いまや最大の敵が「真実」なのだろう。

旧ソ連解体への引き金となった1986年のグラスノスチ(情報公開)以前の姿にロシアの姿を戻そうとしているのではないか。

21世紀の現在、強権によって真実を封じ、虚偽にまみれた侵略戦争を続けても満足する結果は決して得られない。プーチン氏はそう知るべきである。


民主主義と自由を否定する暴力と破壊に対しては、徹底的に言論で戦わねばならない。
https://www.sankei.com/article/20220308-ITJUGKH7IRI3JNQP7CEI3PFXKM/