岐阜県可児郡御嵩町の産業廃棄物処分場問題の顛末(てんまつ)を記した昨年2月出版のノンフィクション本を巡り、町立図書館が「内容にプライバシー侵害の恐れがある」ことを理由に貸し出しをしていないことが9日、分かった。筆者の全国紙元記者から取材を受けた渡辺公夫町長が内容を批判しており、同館は蔵書にするかどうかの判断を保留している。近隣図書館からの本の取り寄せにも対応していなかった。

 同日の町議会定例会一般質問で明らかになった。町立図書館を管轄する町教育委員会は「蔵書の扱いは改めて検討する」と説明。本の取り寄せの要望には「今後は対応する方向で検討したい」と話した。

 町教委によると、同館は筆者から本の寄贈を受け、蔵書に入れる手続きを進めていたが、渡辺町長が昨年3月の町議会で「あんなでたらめを(図書館に)置くわけにいかん」と発言。庁内で著者への抗議を検討する動きも見られたため、蔵書には入れず、倉庫に保管している。

 渡辺町長は取材に対し、2年ほど前にそれぞれ亡くなった職員2人の記述について「うその内容で、職員の名誉が保たれない。ノンフィクションなら正確に書くべき」と批判。「本が話題になって売れるのは不本意だ」として、著者に抗議もしていないという。検閲行為との指摘には、「図書館に入れるなと直接指示した覚えはない」と説明した。

https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/51702