1週間前にロシア軍がメリトポリ市を制圧した際、部隊は市長の事務所を荒らしまわり、職員らを追い出してしまった。市長とそのチームは現在、別の場所からメリトポリを維持し続けようとしている。
「私たちはロシア人とは一切協力していません」と、フェデロフ市長は熱心に語った。
「ロシア人は私たちを助けようとしなかったし、助けることもできない。私たちも彼らの助けは要りません」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナへの侵攻について、歴史的にロシア語を話すロシアの土地だった場所を、ナチスから解放するのが目的だと主張している。しかしメリトポリを含む、ウクライナ南部や東部のロシア語圏の都市では、プーチン氏の部隊は占領軍と捉えられている。

「メリトポリでは毎日抗議デモが行われています」と、侵攻前に家業の電気店経営を手伝っていたユリア・コヴァリオヴァさん(33)は言う。
「ロシア軍が私たちに発砲し、男性1人が撃たれたこともありましたが、私たちは抗議をやめていません」
「一緒に抗議しているので怖くありません。一人で夜道を歩くのは怖いですが、抗議するのは怖くありません」
フェデロフ氏によると、先週起きたこの発砲で男性が脚をけがしたにもかかわらず、8日には約5000人がメリトポリの中央広場に集まったという。へルソン、ベルジャンシク、スタロビルスク、ノヴォプスコフなど、占領下および一部占領下の都市や町での抗議デモの様子が、動画で公開されている。BBCは、住民や地元市長を取材し、現地の状況を把握しようとした。
「抗議している人の数をどう数えていいかわからない。少なくとも2000人はいると思った」と、南部へルソンでIT関係の仕事をしているユノナさん(29)は言った。
「友人の一人がロシア兵に殴られて連れ去られましたが、人々が怒って占領軍を通りまで追いかけ、彼を連れ戻しました」
へルソンのロシア軍は若々しく、不安そうだったと、英語教師のオルハさん(63)は言う。
「私たちは毎日デモに行き、彼らは私たちの近くにいるのですが、怖そうにしています」
「私たちはただ、ウクライナ軍がロシア軍を追い出すのを待っているだけなのに」

ウクライナのデモ参加者に対する深刻な暴力行為の報告は限られており、ほとんどの場合、ロシア軍は緊張して見守っているようだ。しかし、地元市長の中には、市民に街中での活動をどこまで奨励するかというジレンマに直面している人もいた。
メリトポリ市長のフェデロフ氏は、「市民は抗議する必要があるが、同時に自分たちの命を守る必要もある」と語った。
「ロシア兵には近づかず、回り道するようにとお願いしている」
ドンバス近郊のノヴォプスコフのヴァディム・ガエフ市長は、これまでは毎日抗議デモがあったが、3日前にロシア兵が3人の抗議者に発砲し(致命傷ではなかった)、1人を殴打したため、抗議は止まったとBBCに語った。また、ロシア軍は仲介者に対し、抗議参加者を射殺する許可を得たので、もうそうした活動はないはずだと言ったという。

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60672589.amp