https://news.yahoo.co.jp/articles/ed491ac32c2c54b8a131cface8ad22eda016282d

入社30年で転勤10回以上「日常生活に支障をきたす」…拒否はできないの?

「入社当時から県内外の部署移動や転勤が重なり、今も転勤させられています。業務命令だからと日常生活に支障をきたしてまで異動させられるのは正しいのでしょうか」。


電気通信工事の仕事をしている50代男性から、弁護士ドットコムニュースのLINEに疑問の声が寄せられました。

●転勤で生活費が2倍に・・

男性は現在、管理職。勤続約30年になりますが、これまで関東・甲信越地域で10回以上、転勤を重ねてきました。

「もともと転勤ありの採用でした。しかし、母の生活は私の収入でまかなっており、転勤になると生活費が余計にかかることになります」

「日常生活に支障が出るので行きたくない」と転勤を断ったものの、「一度出た辞令は覆らない」「お前だからできる。声をかけられたのはラッキーなんだ」と上司に言われてしまいました。

しかし、昇給・昇格もなく、待遇も据え置きのため、男性としては釈然としない思いを抱えています。

男性は「同期付近の他社員と比較すると1度も転勤や部署移動しない社員や通算2〜3回しか転勤していない社員もいます」と会社の対応に納得がいかない様子です。

全国転勤を了承して入社している以上、どのような場合であっても、入社後は転勤を拒否することはできないのでしょうか。森本明宏弁護士に聞きました。

●原則転勤命令には従わなければならないが…

ーー入社後は転勤を拒否することはできないのでしょうか

結論からいえば、転勤命令に従わなければいけないのが原則です。

全国転勤に了承して労働契約を結んだのであれば、使用者には転勤させるかどうかについて広い裁量権があります。

ただし、転勤命令は労働者の生活に少なからぬ影響を与えますので、無制限に許されるわけではありません。

最高裁判所は、以下のような場合には転勤命令は無効と判断しています。 ・他の不当な動機・目的をもって転勤命令がなされた場合 ・労働者に不当な不利益を負わせる場合

過去には、こんな事例が無効となりました ・労働者を退職に導く意図でなされたもの ・会社批判の中心人物に対する転勤命令 ・要介護状態の老親や病気の家族を抱えた従業員に対する遠隔地への転勤命令

このような事情がなく、業務上の必要性が十分にあるのであれば、 転勤命令を拒むことは難しいでしょう