本稿では、QQE導入以降の金融緩和が経済・物価に与えた政策効果について、
大型マクロ経済モデルであるQ−JEMを用いて推計した。まず、実質金利等の4
つの金融変数について、日本銀行による金融緩和が実施されなかった場合の「仮想
的なパス」を想定した。次に、金融変数がその「仮想的なパス」を辿った場合の経
済・物価の推移をカウンターファクチュアル・シミュレーションにより算出し、そ
れと実績を比較することで、政策効果を試算した。複数のアプローチにより金融変
数の「仮想的なパス」を設定し、シミュレーション結果を比較したところ、QQE
導入以降の金融緩和により、実質GDPの水準は年平均で+0.9〜1.3%程度、消費
者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は年平均+0.6〜0.7%ポイント程度、
押し上げられたとの結果が得られた。また、新型コロナウイルス感染症による大き
な負のショックに直面した2020年以降も、金融緩和によって経済・物価を支える効
果が発揮されていることも示された。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2021/data/wp21j07.pdf