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1000円渡し夜も帰らない母親、17歳少年「妹の世話つらかった」…大津妹暴行死

大津市の無職少年(17)が小学1年の妹(当時6歳)に暴行して死亡させたとして今月4日に逮捕された事件で、少年が「妹の世話をするのがつらかった」との趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材でわかった。きょうだいは別々の児童養護施設で育ち、4月から母親と3人で暮らし始めたが、母親は家を空けることが多く、滋賀県警は背景にネグレクト(育児放棄)があるとみて捜査。児童相談所はこうした状況を把握しておらず、県が児相の対応を検証する。

妹が倒れていた公園。多くの花束が供えられている(19日、大津市で)
 少年は7月下旬〜今月1日、市内の自宅で複数回、妹の腹や背中を殴ったり、蹴ったりし、1日に外傷性ショックで死亡させたとして、県警に傷害致死容疑で逮捕された。


 1日午前、少年が市内の公園近くの民家に駆け込み、「妹がジャングルジムから落ちた」と119番を依頼。搬送先で死亡が確認された妹の全身に約100か所の皮下出血があり、県警は通報は虚偽だったと判断した。

 捜査関係者らによると、きょうだいは母親の養育不安が理由で、大阪と京都の別々の児童養護施設で育った。妹が小学校に入る今年4月、3人で同居を始めた。

 しかし、母親は家を空けることが多く、少年が妹の世話をしていた。母親は、きょうだいに食費1000円を渡し、夜に帰らないこともあったという。

 7月21日未明には、市内のコンビニ店で、きょうだいを見かけた客から110番があった。妹は客に「お金を貸してほしい」と頼んでおり、警察官がきょうだいを自宅に送り届けたが、母親は不在で、事件が発覚した1日も母親は自宅にいなかった。

 少年は容疑を認め、「妹の世話がつらかった」との趣旨の供述をしているという。妹は21日から夏休みで、コンビニ店で保護された際はけがはなかったといい、県警は、日常的な虐待ではなく、少年が21日から8月1日の間に突発的に暴行したとの見方を強めている。
児相、きょうだいと面談せず
 「(少年は)妹の面倒を見てくれる優しい子で……」。きょうだいの母親は、読売新聞の電話取材に言葉少なに話した。妹については「かわいくて……」と声を詰まらせたが、家庭の状況について聞くと「今は何も考えられないんです」とか細い声で何度も繰り返した。

 児相は、一家が同居を始めた4月以降、家庭の見守りを続けていた。5〜7月に3回家庭訪問し、母親とも5回電話で連絡を取っていたが、きょうだいとは一度も面談していなかった。


 母親は「兄が妹の面倒を見てくれる」と話し、子育ての悩みについての相談はあったが、「子どもに向き合っている」と判断していたという。

 きょうだいがコンビニ店で警察官に保護された際、県警は「ネグレクトの疑いがある」と児相に連絡していた。しかし、児相は母親に電話するだけで、きょうだいに会いに行くことはなく、母親と8月4日に面談する約束をしていたという。

 県児相の村田隆次長は「年齢が離れた兄が一緒で、緊急性が高いと判断しなかった」と釈明。「結果的に、判断が適切だったとは言い切れない」と話した。

 元児相所長の奥田晃久・明星大特任教授(児童福祉)は「別々に育った妹を世話することは大きな環境変化で、少年は葛藤を抱えていたと予想される。養育に課題を抱えた家庭だったのであれば、児相は、同居後も子どもに面談して事情を聞く必要があった。家庭の状況を丁寧に把握していれば、事件を防げた可能性がある」と指摘した。

 県は近く、外部有識者で作る児童虐待事例検証部会で、児相の対応を検証する。