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近づく防衛と民生分野 新護衛艦「くまの」搭載の技術を応用した超マルチ無人艇とは

新型護衛艦「くまの」引き渡し 新装備の技術は民生分野に波及
 海上自衛隊の3900トン型護衛艦(FFM)の配備がいよいよ始まりました。2022年3月22日に三菱重工マリタイムシステムズ玉野本社工場で2番艦「くまの」が引き渡されており、1番艦「もがみ」の引き渡しも近いと考えられます。FFMはコンパクト化、省人化、多機能化の3つをコンセプトにした全く新しいタイプの艦艇で、防衛省は合計22隻を建造する計画です。配備隻数が増えるに従って私たちが目にする機会も増えるでしょう。
 
 そんなFFMシリーズに搭載が予定されている新装備の一つにUSV(水上無人機)があります。FFMが機雷の敷設された危険な海域に入ることなく、機雷処理を可能にする無人機雷排除システムをUUV(無人水中航走体)などと共に構成されており、2022年度の防衛省予算で取得が決まりました。
 
 実はこのUSVの技術を民間に転用し、船舶の無人化につなげようという試みが始まっています。
JMUの防衛関連子会社が打ち出した多目的無人艇に技術転用
 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)子会社で防衛装備品の設計、製造、メンテナンスを手掛けるジャパンマリンユナイテッドディフェンスシステムズ(JMUDS)が2021年11月、無人機雷排除システムの技術検証用に開発した多目的水上自律無人艇「うみかぜ」を使用し、海上から陸上施設の点検を行う実証実験を京都府舞鶴市で行いました。

「うみかぜ」は全長11m、幅3.2m、満載排水量11トンで、船体にはFRP(繊維強化プラスチック)を採用。推進器としてウォータージェット2基を搭載し、速力は最高23ノット(約42.3km/h)まで出すことができます。運用時の汎用性を高めるため後部甲板にスペースを確保するとともに、船底へ格納式ドームを装備しました。搭載が可能な機器はサイドスキャンソナーやマルチビーム音響ソナー、海洋環境測定器、水中測位装置、水中無人機(UUV)、小型無人機(UAV)など多岐にわたります。

 同船はプログラムによる自動航走やアンカーを必要としない定点保持、方位保持といった機能を備えているうえに、ジョイスティックによる遠隔無線操縦も可能となっています。管制システムを陸上や母船に設置し、遠隔で船体の状態監視や任務の変更を行えるため、将来的には舞鶴から東京湾で運航中のUSVをコントロールできるようになるかもしれません。