『北の国から』放送開始から40年 当時、なぜ視聴者は魅了されたのか

ドラマ『北の国から』(フジテレビ系。原作・脚本は倉本聰)が放送開始40周年を迎えた。
1981年10月から半年にわたってオンエアされた連続ドラマは全話平均視聴率14.8%、終盤になって数字が上がっていき、最終回は21.0%だった。
今年3月に88歳で逝去した田中邦衛さん演じる黒板五郎と幼い子供の純(吉岡秀隆)、螢(中嶋朋子)が、北海道の富良野という大自然の中で生活し、さまざまな出来事に心が揺れる様を描いた。
小さな家族の大きな愛の物語だ。

 1983年からは断続的にスペシャル版が放送され、それは純と螢の成長物語でもあった。
『’83冬』から『2002遺言』まで全てが20%超え。特に最終作の『2002遺言 前編』は38.4%を記録した(後編は33.6%)。
前編の視聴率は、この年の視聴率ランキングで、サッカーの日韓W杯とNHK紅白歌合戦に次ぐ数字となった。『北の国から』は、なぜここまで視聴者を惹きつけることができたのか。
芸能記者が話す。

「高度経済成長も終わり、1980年代後半から日本はバブル景気に沸いた。豊かな時代が訪れ、消費が美徳とされた。そんな時に、『北の国から』は日本人が忘れかけた古き良き精神を訴えていた。連ドラの時には、五郎が『じゅうぶん使えるのに新しいものが出ると――、流行におくれると捨ててしまうから』『もしもどうしても欲しいもンがあったら――自分で工夫してつくっていくンです。つくるのがどうしても面倒くさかったら、それはたいして欲しくないってことです』など現代へのアンチテーゼとも捉えられる名言を残しています」(以下同)

 1980年代後半から1990年代前半にかけて、テレビでは『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)などのトレンディードラマが流行。
20代の恋愛模様を中心に描かれるドラマが少なくなかった。

「『北の国から』も純や螢の恋愛を描いていますが、根底には黒板一家の関係性をテーマにしていた。登場人物に多様性があるし、老若男女の視聴者が誰かに感情移入できる。そのため、幅広い世代にファンが生まれたのだと思います」

 駆け落ちや不倫、人に知られたくない過去を持つなど、新作ごとに重いテーマがあった。

「黒板五郎が妻の令子(いしだあゆみ)に不倫されて別れるところから連続ドラマが始まったし、『’98時代』では螢が不倫相手の子供を妊娠している。ドラマとはいえ、ハードな内容でした。人は誰でも間違いや矛盾を抱えているし、何があっても生きていかなければならない。だから、他人を許す心も大事だと脚本家の倉本聰さんは訴えたかったのかもしれません」

『’98時代』で黒板五郎はこう言っていた。

「悪口ってやつはな、いわれているほうがずっと楽なもンだ。いってる人間のほうが傷つく。被害者と加害者と比較したらな、被害者でいるほうがずっと気楽だ。加害者になったらしんどいもンだ。だから悪口はいわンほうがいい」

 放送開始から40年経った今でも、色褪せないドラマとなっている。

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