――デジタル化が進んだ時代に漢字を学ぶ意義はなんでしょうか。

漢字の「読み」は語彙(ごい)の学びと一体になっています。読めないと変換もできないので、漢字を読めるようになることの重要さは変わらないでしょう。

一方、「書き」を学習する意味は感じにくくなっています。デジタル機器で入力すれば自分で書く必要がないからです。ただ、最近ではタッチペンや指を使って、デジタル機器の画面に「手書き」できるようになりました。デジタル機器でメモを取るにしても、決まった書式の画面にキーボードなどを使って文字を入力するのではなく、紙と同じように「手書き」した方が自由度は高まります。そうしたなかで、考える手段としての手書きのニーズは見直されてきています。デジタル機器がさらに進化したとしても、手書きが完全に取って代わられることはないと感じています。実際には、ケースバイケースで「手書き」が使われていくことになるのではないでしょうか。

ただ常用漢字は2136字もあります。「主な常用漢字」を書けるようになることが、今の高校の目標ですが、どの漢字が「手書き」できなくていいのかは常用漢字表の改定の際に議論されたものの、明示されませんでした。現状では大学入試に出るので、学ばなくていいという判断はしにくいでしょうが、漢字の「書き」の学習の負担が大きすぎるのではないか、という点など、今のままの漢字学習でいいのかを議論するタイミングが来ていると思います。