https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220404/k10013566171000.html

“使い終えたら分解” 夢のプラスチックへの挑戦と可能性

人類共通の課題となっている“プラスチックゴミ問題”。海岸を歩けばレジ袋やペットボトルなどプラスチックゴミを目にすることは少なくない。
プラスチックは丈夫であるが故に環境で分解されずにやがて海に流出。それを餌と間違えた魚が食べるなど健康への影響も懸念されている。
こうした中、東京大学の岩田忠久教授は「使っている間は頑丈で、役目を終えたら“分解する”」まるで魔法のようなプラスチックの開発にこぎつけた。
そして、科学者たちの信念は、プラスチックゴミ問題の解決だけでなく、医療、農業などさまざまな分野の未来もいま変えようとしている。
“使い終えたら分解” 夢のプラスチックへの挑戦と可能性

切り札は「酵素」
東京 文京区にある東京大学の岩田忠久教授の研究室では、“白い粉”のような物質を使い、プラスチックを分解する研究が続けられている。

この白い粉の正体は「酵素」。
あるカビから発見されたもので、プラスチックを分解させる切り札だ。
カビの中から発見された酵素
いま世界では、さまざまな「分解されるプラスチック」(生分解性プラスチック)が開発されている。

日本で多く流通している「ポリ乳酸」を使った生分解性プラスチックの場合、分解するには「温度60度、かつ湿度60%」という条件が必要だ。しかし、自然界ではほぼこうした環境は存在せず、川や海に流出してしまうと、分解される可能性は極めて低い。

そこで岩田さんが考えたのが、プラスチックの中に、あらかじめ酵素を閉じ込めておくというアイデアだ。
プラスチックの中に閉じ込められた酵素(イメージ)
プラスチックが川や海に流出して砕けると、内部に水が入る。
すると中で眠っていた酵素が水と反応して分解が始まるという仕組みだ。