東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で、1、2号機間にある高濃度の放射性物質で汚染された配管の撤去が難航している。現場は建屋の外では構内で最も放射線量が高く、遠隔操作による切断はトラブルが続発。背景には、東電の甘い想定と準備不足があった。

◆強風、放射性物質濃度、器具断裂…
 「最初が一番難しい」。3月31日の記者会見で、東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は声を落とした。
 東電は当初、切断作業は1カ月ほどで終わると見込み、序盤で難航する予測を一切説明してこなかった。ところが、実際は1カ月たっても全く進んでいない。
 準備期間中から、クレーンや切断装置を制御する油圧機器に不具合が相次ぐも、その場しのぎの対処に終始。手法や工程が適切かを十分検討しないまま、2月24日に作業を始めた。

 4種類あるてんびん状の切断装置のうち、幅12メートル、重さ6トンと最大の装置を最初に投入。2月中は強風にあおられ、配管に近づくこともままならなかった。
 3月1日にようやく切断を始めたが、開始直後に放射性物質の濃度上昇を示す警報が鳴り、チェーン状の切断器具も故障。翌日、切断器具の回転速度を落とし、切りくずの飛散を抑えて警報が鳴らないよう試みたが、器具が断裂した。

◆油圧ホース短く、能力発揮できず
 小手先の対処で解決できず、高い放射線量の現場で模擬配管を使っての訓練を余儀なくされた。
 その中で、切断装置につながる油圧ホースの長さを実際よりも4分の1短い状態として機材を設定していたことが判明した。このため油の量や温度が十分ではなく、切断器具が能力を発揮できなくなっていた。

 単純ミスにつながった原因は、原発構外の訓練で実際のクレーン(750トン)よりも小さいクレーン(500トン)を使ったことだった。アーム部分に沿わせるホースはクレーンの大小で長さが異なる。この当たり前の違いを踏まえないまま、本番に臨んでいた。

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