上海とコロナと権力闘争…中国総書記「異例の3期目続投」目前に吹き始めた逆風

 上海では、「一比十四億」(1対14億人)なる隠語も生まれた。「清零政策」には、14億の中国人がこぞって反対しているのに、「中南海」に鎮座するたった一人の皇帝様(習近平主席)だけが推進派であると揶揄する言葉だ。

 例えば、4月10日の上海市内の新規感染者数は2万6087人に上ったが、そのうち無症状の感染者が2万5173人と、全体の96.5%を占めていた。それなのに上海では、2年前に武漢でやったような徹底した「清零政策」を取り続けているため、市民は外出さえできない。

 11日になってようやく、全市2512万人のPCR検査を行い、うち2152万人の結果が出たとして、7624ヵ所の「封控区」、2460ヵ所の「管控区」、7565ヵ所の「防範区」に分けて、「7日間の封鎖+7日間の自宅待機」といった措置を講じれば、その地区の感染者が出ない場合、封鎖を解除すると発表した。

 重ねて言うが、欧米や日本などが、とうの昔に「コロナとの共存」を進めている中で、いつまでも「清零政策」を続けるのは愚策だと、多くの上海人は思っている。そうした考えの代表格と見られていたのが、上海市のコロナ対策の現場責任者である張文宏氏だった。上海を代表するこの感染症の専門家は、童顔の容貌の割に、あけすけな発言で知られる。



 そして、中国最大の経済都市・上海である。上海は冒頭述べたように、中国で最も「中南海」に対して反抗的な都市だ。私は10年ほど前に北京に住んでいた時、出張で北京を訪れた上海人たちから、よく言われたものだ。

 「北京を一言で言い表すなら、『土破旧』(トゥーポージウ=ダサい、ボロい、古臭い)だ。それは、街の風景から人間の頭までだ。その点、われわれ上海人は、常に欧米から最新の文物や情報を吸収している。北京よりも欧米の方を向くのが、この150年の上海人の伝統なのだ」

 多くの日本人が、北京よりも上海に親近感を覚えるのも、上海がかつて欧米や日本の租界であり、こうした上海人気質が培われてきたことが大きい。上海人とは、「中国語と上海語を話すが、頭は西側諸国の国民のような人種」なのかもしれない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7e35057674bb5d2856dce1903bf4aa83bf83c5d7?page=2