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生活保護 去年の申請件数 前年比5.1%増 コロナ影響長期化

新型コロナの影響が長期化する中、去年1年間の生活保護の申請件数は、およそ23万5000件と前の年より5%余り増えて、2年連続の増加となったことが、厚生労働省のまとめで分かりました。
厚生労働省によりますと、去年1年間に生活保護が申請された件数は、速報値でおよそ23万5000件と、前の年と比べて1万1000件余り、率にして5.1%増えました。
生活保護の申請件数が前の年より増加したのは2年連続です。
生活保護の申請件数は、比較が可能な2013年以降でみると、前の年と比べて6年連続で減少していましたが、おととしから増加に転じています。
生活保護を受給している世帯は、去年12月の時点で全国で164万4884世帯と、前の年の同じ月と比べて6700世帯余り増加しています。
生活保護を受給する世帯のうち、最も多いのは「高齢者世帯」で90万7301世帯と、全体の半数を超えています。
厚生労働省は「新型コロナの影響が長期化する中、再就職が難しいことなどから、生活が苦しく追い詰められる人が増えている。感染拡大による経済活動への影響が懸念され、今後の動向を注視していきたい」としています。
厚生労働省は「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるので、ためらわずにご相談ください」と、ホームページでメッセージを発信しています。
生活保護を申請した男性は
先月、生活保護を申請した大阪で暮らす32歳の男性は、介護が必要な高齢者およそ20人が利用する宮城県にあるグループホームで正社員として働いていました。
介護職としては別の施設での勤務も合わせておよそ10年の経験があります。しかし、男性によると去年4月に新型コロナに感染した後、疲れた時などに37度5分前後の微熱が出やすくなりました。
病院で診察を受けましたが医師からは新型コロナの後遺症の可能性が高いと言われたということです。
男性は感染防止のための出勤時の検温でひっかかることが多くなり、仕事を休まざるをえない日が増えました。
施設の規則で検温にひっかかると熱が下がった後も3日間は自宅待機となって欠勤の扱いとなり、欠勤一日当たり7000円が給与から引かれたといいます。
それまでは1か月の収入は手取りでおよそ15万円ありましたが、欠勤のために9万円前後まで落ち込み、1か月の収入が2万5000円になった月もあったと話します。
収入の減少でおよそ60万円あった貯蓄を取り崩しながら会社の寮で暮らしていましたが、微熱が治らない状態が続いたため去年11月に仕事を辞めざるをえませんでした。
そして都市部の方が仕事を見つけやすいと考え、知り合いがいる大阪で再就職の活動を進めました。
しかし仕事はなかなか見つからず退職した時には貯蓄は20万円ほどありましたが、ことしに入り底をついたということです。
男性は家族とは10年以上連絡をとっておらず頼ることができませんでした。
寮を出た後は知り合いの家やインターネットカフェなどで生活していたということで、現在は支援団体のサポートを受けてアパートで暮らしていて、先月24日に生活保護を申請しました。
男性は「本当に去年の春までは何事もなく生活できていたのに、何でこうなってしまったのだろうと思います。体調をきちんと整えて仕事を探し始めたい」と話していました。
支援団体 “現役世代からの相談増”
新型コロナの影響が長期化する中、生活に困窮する人を支援する団体からは20代から40代の現役世代からの相談が増えているという声が聞かれます。
大阪の支援団体、NPO法人「生活支援機構ALL」では去年1年間に全国から寄せられた生活困窮に関する相談は記録が残っているだけでおよそ800件に上りました。
感染拡大前の2019年の相談はおよそ300件で、それと比べると2倍以上に増えているといいます。
新型コロナの影響が長期化していて収入が減少したり契約が更新されない「雇い止め」で仕事を失ったりして経済的に余裕がない人の生活がさらに苦しくなるケースが多く、「新型コロナの影響で飲食業が続けられず収入がなくなった」とか、「会社の寮で暮らしていたが仕事を失って住まいもなくなった」などの相談が目立つということです。
支援団体では相談を寄せる年齢層も変化していて、20代から40代の現役世代からの相談が感染拡大前と比べて増えていると感じています。
団体では生活保護の申請をサポートしていて、新たな仕事を探すためにインターネットが無料で利用できる「Wi-Fi」が整備されたアパートなどに入居できるように取り組んでいます。